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2016年度の海外投資家による日本国債の買越額は最大に

久保田博幸金融アナリスト
単位、億円 日本証券業協会のデータを基に作成

4月20日に日本証券業協会は3月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

公社債投資家別差し引き売買高

注意、マイナスが買い越し

単位・億円

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 6603(-54、3819、1167)

地方銀行 7266(1852、4427、305)

信託銀行-160(-1773、1044、2078)

農林系金融機関-3662(-2511、239、-48)

第二地銀協加盟行 721(209、553、31)

信用金庫-378(131、514、25)

その他金融機関 2174(-260、2079、755)

生保・損保-5505(-5461、-458、-119)

投資信託 169(-153、381、517)

官公庁共済組合-261(-178、0、0)

事業法人-364(-19、-21、5)

その他法人-1213(-28、-27、-533)

外国人-17190(-4603、1222、-12886)

個人 254(-2、43、5)

その他 13781(9454、25、7387)

債券ディーラー-1256(117、-1409、88)

3月の国債の投資家別売買高をみると都銀は6603億円の売り越しとなった。2か月連続の売り越し。売りは長期主体となった。また、地銀も7266億円の売り越しとなり、こちらも長期ゾーン主体に全般に売り越しとなった。2月地銀の売越額は8042億円と比較できる1998年以降最大となったが、3月(7266億円)もそれに近い売り越しとなった。さらに「その他」が中期と超長期主体に1兆3781億円もの売り越しとなった。ゆうちょ銀行の売りであろうか。

海外投資家は中期債主体に1兆7190億円の買い越しとなっていた。ただし、海外投資家も長期ゾーンは売り越しとなっていた。2016年度全体(短期債含む)では218兆1379億円の買い越しとなり、これは比較できる1998年度以降、最大となった(日経新聞の記事より)。

3月の債券市場では米利上げ観測の強まりによる米債安から、一時調整局面となった。10年債利回りは0.1%近くまで上昇した。3月15日のFOMCでは追加利上げを賛成多数で決定した。今後の利上げペースは今回を含めて年3回とする中心シナリオを据え置いた。FRBの緩やかな利上げが意識され、米10年債利回りは前日の2.60%から2.49%に急低下し、日本の10年債利回りも0.055%あたりに低下した。

海外投資家の売買状況

月 売り越し買い越し(マイナスは買い越し)、(超長期、長期、中期)、国債売買高、うち中期

2016年 4月-36565(328、-9142、-27271)、294983、62513

5月-16775(1347、-6186、-10933)、246889、34315

6月-36565(328、-9142、-27271)、344055、65055

7月-16693(1860、-4453、-13200)、275366、61036

8月-16838(-1108、-5390、-9702)、302397、65718

9月-27674(-3320、-4283、-19310)、380542、102124

10月-5717(1051、-5636、166)、264616、62534

11月-11672(2275、-2448、-10674)、302551、48912

12月-26198(-970、2054、-26261)、317612、57609

2017年

1月-23784(-1153、-504、-19500)、294839、61994

2月-11210(-2687、3009、-10323)、292813、51127

3月-17190(-4603、1222、-12886)、312730、58810

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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