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3月のFOMCでの利上げがほぼ確定的に、背景にはトランプ大統領による影響も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

イエレン議長は2月14日の上院銀行委員会における半期に一度の証言で、緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではないと指摘し、利上げを遅らせれば後手に回り、結果的に速いペースでの利上げを余儀なくされると指摘した。

フィッシャー副議長は16日、ブルームバーグテレビのインタビューで、この時期に想定していた状況と現状は一致している、つまりインフレ率が2%に近づき、労働市場は力強さを増し続けるという想定だと発言し、この二つが実現すれば、ほぼ想定していた通りの軌道に乗ることになるだろうと述べた。

2月22日に公表された1月31~2月1日のFOMC議事要旨では、多くのメンバーが雇用とインフレをめぐる指標が予想通りに推移すれば「比較的早期に」利上げを実施することが適切になる可能性があるとの認識を示していた。

しかし、昨年も利上げに前向きな姿勢を示しながらも結果として利上げは年末の一回に止まったこともあり、市場では早期利上げの可能性は少ないとの読みとなっていた。

2月27日にはダラス連銀のカプラン総裁が、近い将来に利上げする必要があるだろうとの認識を示し、3月の可能性を示唆。

28日にはサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁も、3月のFOMC会合では利上げを「真剣に協議」すると見込まれると語った。

そしてニューヨーク連銀のダドリー総裁も28日にCNNテレビのインタビューで、追加利上げについて「金融政策を引き締める根拠はより説得力を増している」と語ったことで、市場では急速に3月の利上げを意識し始めた。

たたみかけるように3月の利上げの可能性を関係者が指摘し、ハト派とみられるニューヨーク連銀のダドリー総裁の発言もあって市場はここにきて急速に早期利上げを織り込みにきた。

28日のフェデラルファンド金利先物市場が織り込む3月の米利上げの確率は70%余りとなっていた。この数値は無視できず、3月14、15日に開かれるFOMCで利上げが決定される可能性は極めて高くなってきたと見ざるを得ない。

昨年と一昨年はそれぞれ12月のFOMCで一回利上げを決定した。しかし、今年は早くも3月のFOMCで利上げを決定するとしたらその根拠は何か。物価をみると上昇圧力は強まりつつある。雇用も好調さを持続している。だからといってこれまでの慎重姿勢を崩す理由とはならない。

ここにはやはりトランプ大統領就任による影響が大きいのかもしれない。ただし、それはトランプ政権による経済政策への期待といったものよりも、トランプ氏の影響力がFRBに及ぶ前に利上げを急ぐ必要があった可能性がある。FRB理事の人事に加え、来年はイエレン議長とフッシャー副議長も任期が来る。この人事は大統領が握っている。そのトランプ大統領もいまのところは利上げについては容認しているようにもみられ、タイミングとしても早めに利上げしておきたいという意向が働いたのではなかろうか。

そしてFOMCメンバーのなかでも最もハト派的とされているブレイナード理事は3月1日に、世界経済の回復と堅調な米国経済は、FRBによる利上げが「早期に」適切となることを意味するとの見解を示した(ロイター)。これにより、余程のアクシデントか14日までに発表される米経済指標が予想外の悪化を示すようなことがなければ、3月14、15日に開かれるFOMCでの利上げ決定は確定的となったと見ざるを得ない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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