ECBのテーパリング観測は異常な金融緩和策の終焉を示唆か
ECBは恐らく量的緩和の期間終了前に段階的に買い入れを減らし、月100億ユーロずつペースを落としていく可能性がある。ユーロ圏の複数の中央銀行当局者が明らかにしたとブルームバーグが伝えた。
やや唐突感のある記事ではあるが、火のないところに煙りは立たない。ユーロ圏の複数の中央銀行当局者がこのような認識を持っているとしてもおかしくはない。もちろんそれは量的緩和導入時に反対の意向を表明していたドイツなどの中央銀行当局者であろう。
ただし「一方で、現時点での終了時期となっている2017年3月以降も月800億ユーロの現行ペースで量的緩和を延長する可能性も依然排除されていない」ともしており、ECB内ではドラギ総裁を中心とした積極緩和派とドイツなどを中心とした慎重派の勢力争いとなっていることも伺える。
9月8日のECB政策理事会では金融政策の現状維持を決定した。量的緩和を延長するのではないかとの市場の観測もあったが、ドラギ総裁は会見で「資産買入れ策の期限延長について議論しなかったと説明」した上で、「資産買入れの円滑な実施を確実にするための選択肢を検討するよう指示した」とも伝えられた。
この選択肢については日銀同様にECBも大規模な資産買入を継続することが次第に困難になりつつあり、日銀が昨年12月の決定した補完措置のようなことを行い、少しでも資産買入を継続出来る施策を練るのではないかとみていたが、どうやらその選択肢にはテーパリング(月額買入額の縮小)も入っていた可能性がある。
ECBは当然ながら、今年に入ってからの日銀のマイナス金利の導入から、9月21日の決定会合で導入した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に至る経緯は分析していたとみられる。日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は量の限界とマイナス金利の副作用を意識した政策とも取れることで、同様の政策を行っているECBにはおおいに参考になろう。
それとともに、日銀は結果としてテーパリングを意図しているのではないかとの見方も当然出てくる。しかも日本の金融市場はこれに対して動揺は示していない(あくまでいまのところではあるが)。これを見てECBも出口を見据えた政策を取る可能性も意識しはじめたのかもしれない(勝手な想像ではあるが)。実際にECBがテーパリングを行うには、欧州の金融市場に対して事前に織り込ませることも必要であり、今回はその一環となっている可能性もないとはいえない。
日米欧の中央銀行がこれほど大胆というか異常なまでの金融政策をなぜ行わなければいけなかったのか。その主目的はデフレ脱却とかではなかったはずである。百年に一度という金融経済危機という有事に対する政策であった。しかし、そのリスクはかなり後退している。
いまなおその政策を継続もしくは拡大しているのは、デフレ脱却のためとかに置き換えられてしまっている。しかし、市場心理を改善するには有効であったかもしれない異常な金融緩和は、物価に対してはそれほど効果的ではなかったという実験結果も明らかにしてしまった。これからは困難とみられている出口政策にそっと道筋をつける事も重要であり、それを多少なりECBも意識しはじめているのかもしれない。