英国のEU離脱ショック G7や中央銀行の対応策は?
24日の英国での国民投票の結果は予想外の離脱派の勝利となりました。事前の世論調査ではかなりの僅差とされていたのですが、金融市場では最終的には残留派が離脱派を上回るであろうとの楽観的な見通しが強かったのです。ところが開票が進むに連れ、離脱票が残留票を引き離す格好となったことで、ちょうど市場が開いていた東京市場がパニックに陥りました。
もちろん外為市場では英国のポンドが下落したのですが、ドル円が106円台から103円台で乱高下したあと、一気に100円割れとなるなど急激な変動が起きました。リスク回避の動きにより東京株式市場は急落し、朝方の16000円台から15000円割れとなりました。日経平均は1000円以上も下落して引けています。
24日の欧州や米国市場でも予想外の展開を受けてリスク回避の動きを強めることが予想されます。株式市場は特に影響を受けるとされる銀行株主体に下落することが予想され、通貨ではポンドやユーロなどが下落するとともに、国債市場ではドイツなどの国債が買い進まれる反面、イタリアやスペイン、ポルトガルの国債が下落すると思われます。ただし、東京市場が引けてからはドル円など少し落ち着きを取り戻しており、いったんリスク回避の動きとなっても、東京市場ほどの動揺はない可能性もあります。
しかし、英国の離脱派の勝利を受けてキャメロン首相が辞意を表明し、英国の政局そのものが動揺する可能性があります。それとともにスコットランドの独立問題も浮上することが予想されます。今回の離脱派はロンドンを中心とした南の地域に多く、スコットランドは残留派が多数を占めるところが多かったこともこの動きに拍車を掛けることが予想されます。
今回の英国の国民投票の背景には、国家統一を目指すような欧州連合(EU)に縛られたくないことや、移民問題が絡んでいました。このため今後は英国と同様にEUやユーロから離脱する国が出てくる可能性があります。そうなるとギリシャ問題が再燃する恐れもあります。
英国のEU離脱問題に対しては、5月の伊勢志摩サミットの首脳宣言でも「成長に向けたさらなる深刻なリスク」と明記されているなど、英国だけにとどまらず、欧州全体さらには世界経済にも影響を与える懸念がありました。
このためG7などで何かしら協議を行って対策を講じる可能性はありますが、なかなか効果的な対応策は見い出せないと思われます。金融市場が動揺したことで中央銀行が資金供給を行うなどの対策も講じられそうですが、たとえば追加の金融緩和というのも難しそうです。
イングランド銀行が再び量的緩和策を講ずることはないとは言えませんが、よほどの景気悪化が意識されないと難しいと思われます。ECBはすでにこれ以上のマイナス金利の深掘りはできそうもなく、むしろ今後の動向次第ではユーロというシステムそのものが揺らぐ可能性もあって残り少ないカードは温存されると思われます。日銀も追加緩和手段は限られることで、臨時の会合を開いての追加緩和は余程の事態とならない限り難しいと思われます。そしてFRBについては6月の追加利上げ見送りの要因でもあった英国のEU離脱が起きてしまったことで7月の利上げの可能性も後退したと思われます。
リーマン・ショックや欧州の信用不安など大きなショックがやっと後退し、米国では利上げができる環境となったにも関わらず、あらたな不安要素が出てきました。ここで金融経済リスクが高まったとしても、それに対応できる手段には限りもあり、大きなショックに繋がらないよう祈るばかりともなりそうです。