パリ同時テロの金融市場への影響
フランスのパリで13日夜、武装したグループによる同時テロ事件が発生した。これによる金融市場への影響も危惧されたが、株価等を含めてその影響は限定的となった。これにはいくつか理由が存在すると思われる。
2001年9月11日の米国における同時多発テロの際には、米国の金融システムの中心地が大きな被害を受けた。このためニューヨーク証券取引所の取引は中止となり、再開されたのは17日となった。ニューヨーク証券取引所が予定外で連日の休場となったのは、第二次世界大戦の勝利を祝った1945年8月15~16日以来。崩壊した世界貿易センターには数多くの金融機関のオフィースがあったことで、金融システムは一時機能不全に陥った。しかし、米国の金融機関のバックアップシステムが完備していたことや、FRBなどによる懸命の対応により、米国債の取引は13日に再開された。
今回のテロはフランスのパリではあったが、金融に絡んだ施設等が影響を受けたわけではなかった。このため2001年9月の米国における同時多発テロの際のような影響が金融市場に発生することは考えづらかった。
日本におけるテロとも言える1995年3月20日の日本での地下鉄サリン事件の際には、東京証券取引所に近い茅場町も被害を受けたが、この日の取引所での取引は行われていた。
何かしらの要因による金融市場への影響を考える際には、金融システムそのものへの影響の程度を考慮する必要がある。日本においては、日銀ネットが稼働しているかどうか、そして東証などの取引所の取引が可能であるかどうかが、あたりが目安となる。
2011年3月11日金曜日に発生した東日本大震災の際も、日銀ネットへの影響はなく、金融システムは機能していた。このため政府の判断により14日の月曜日は平常通りに取引所は開かれ、金融取引も滞りなく行われた。
今回のパリ同時テロの影響が金融市場において限定的であったのは、トルコでのG20が予定通りに開催されたことも大きかったように思われる。トルコも狙われていたとの観測があるが、G20が無事に開催され、ここでテロに対して各国首脳が非難声明を出して連帯を強めたことも、市場におけるリスクの後退要因になったのではないかと予想される。