中央銀行のはじまり
日銀が設立されたのは1882年です。このときすでに欧州などでは、中央銀行制度が確立されていました。しかし、「中央銀行制度」は、最初から現在のような仕組みが整っていたわけではありません。世界の歴史とともに形作られてきたのです。
日銀の設立に際しては、欧州の中央銀行のなかでもベルギー国民銀行をモデルとしましたか、中央銀行制度は欧州で形作られてきたのです。世界で最初の中央銀行は1668年に設立されたスウェーデンの国立銀行(Sveriges Riksbank)、通称リクスバンクです。リクスバンクに次いで歴史が古いのが英国のイングランド銀行(Bank of England)、そしてフランス銀行(Banque de France)と続きます。
現在、主要国のほとんどに中央銀行と呼ばれる銀行が存在しています。中央銀行と言っても国によってやや形態に違いがみられますが、ある程度共通した機能を有しています。中央銀行は、世界の歴史とともに必要に迫られて形作られてきました。
世界で初めて設立された中央銀行がスウェーデンのリクスバンクですが、それ以前にスウェーデンには最初の銀行であるバルムストルック銀行がありました。スウェーデンは通貨の原料となる銀や銅の不足に悩まされていました。そこで、ストックホルム銀行は1661年にヨーロッパで最初の紙幣を発行して、銀貨や銅貨の代替貨幣として流通させたのです。しかし、十分な担保を確保しないまま過剰な紙幣を発行し、結局その活動を停止してしまいました。
バルムストルック銀行の破綻後に、国王ではなく議会の監督下に置かれた銀行が設立されました。これがリクスバンクです。ただし、支配人は国王によって任命されました。当初、リクスバンクはバルムストルック銀行の経験から、銀行券の発行は禁止されていたのですが、スウェーデンの通貨不足などにより、1701年に信用紙幣の発行が議会によって認可されました。
1897年のリクスバンク法により、リクスバンクには独占的に通貨の発行権が付与されました。銀行券の発行ができなくなったほかの銀行は、リクスバンクから優遇金利で資金を借り入れることができるようになりました。この優遇金利貸出しを通じて、リクスバンクは「銀行の銀行*」としての機能を果たすこととなったのです。銀行の銀行としての中央銀行の役割がこのようにして形作られてきました。
そして、民間銀行との資金のやり取りなどを通じて行うのが、中央銀行のもうひとつの役割である「金融政策」となりました。リクスバンクは国王ではなく議会の監督下に置かれるなど、現在の多くの中央銀行と同じように「政府などからの独立性」といった特色も持っていました。また、民間の資金によって設立されたことなどはイングランド銀行などと同様です。