スコットランド独立問題とBOEの正常化
今月18日に英北部スコットランドで独立の是非を問う住民投票が実施される。9日に発表された世論調査では、独立反対派が39%、賛成派が38%と拮抗していた。このため、可能性はさすがに低いとみられていたスコットランドの独立が現実味を帯び、英国の通貨であるポンドが急落した。ところが、10日の世論調査では、今度は反対派のリードが示されたことでポンドの急落はいったん止まったものの、状況はかなり緊迫している。キャメロン首相含め、各党の党首も急きょスコットランド入りし、独立回避に向けて懸命の努力を続けているようである。
スコットランドの独立問題は、やはり独立の気運が高まっているスペインのカタルーニャ州にも影響を与えた。カタルーニャ州は11月にも独立の是非を問う住民投票を実施する予定だが、中央政府はこれを認めていない。この動きに反応し、ここにきてスペインの国債は下落が続いている。また、11日にはカタルーニャ州の首都バルセロナで大規模なデモが行われ、180万の市民が参加した。スペインからの独立を目指す大規模なデモで独立の是非を問う住民投票の実施を求めていた。
スコットランドが本当に独立となってしまうと、英国は国内総生産の8%、国土の3割強を失うこととなり、英国経済には大打撃になりうる。さらに国連安保理の常任理事国の地位も危うくなるとの見方もある(11日付け日経新聞朝刊)。
スコットランド独立となれば、当然ながらイングランド銀行の金融政策についても利上げどころではなくなる可能性がある。金融政策ところか英国の通貨制度そのものに対しても先行きが非常に不透明になりかねない。
ちなみに独立賛成派のスコットランド国民党(SNP)のサモンド党首の青写真によると、独立スコットランドはイングランド銀行を残りの英国と共通の中央銀行に、そしてポンドを共通通貨にするというものだそうである(ロイター)。
さすがに独立という選択肢は取りづらいと思われるが、こればかりは投票結果次第であり、絶対に独立などありえないとは断定はできない。それでも可能性としては高いと思われる独立を回避した場合のイングランド銀行の動向も考えておく必要がある。
イングランド銀行のカーニー総裁は9日、先月公表されたインフレ報告において、利上げを市場の予想通り2015年の春に開始した場合は、インフレ率が3年以内に中銀の目標とする2%近くに落ち着くとの見通しが示されたことに言及した。「経済が正常化する条件の多くは既に満たされており、金利が正常化を始める時期は近づいている」とも語った(9日付け朝日新聞)。
スコットランドの独立を含めて、予想外の事態が発生するようなことがなければ、イングランド銀行は出口政策に向けて舵を取りつつある。さすがに年内利上げの可能性は後退しつつあるが、来年にはFRBとともに利上げの時期を探る動きが予想される。