4月に都銀は長期国債を大量売り越し
5月20日に日本証券業協会が発表した4月の公社債投資家別売買高(除く短期債)によると、都銀は3兆7058億円の売り越しとなった。都銀の売り越しは2か月連続となり、売越額は2012年4月以来の水準となった。
公社債投資家別売買高(除く短期債)、単位は億円(マイナスは売り越し)
都市銀行-37058
地方銀行 13727
信託銀行 6881
農林系金融機関-2869
第二地銀協加盟行 3093
信用金庫 3063
その他金融機関-727
生保・損保 4929
投資信託 1754
官公庁共済組合 198
事業法人 2393
その他法人 1605
外国人 9610
個人-295
その他-14590
債券ディーラー 1652
国債投資家別売買高をみると、都銀は超長期国債を3362億円売り越し、長期国債を5兆7096億円売り越し、中期国債を2兆4594億円買い越しとなっていた。金額からみて都銀の売買は国債主体であり、保有する長期国債を約5.7兆円も売却していた。
参考までにこのデータは発行時点での期間によって分けられているものではあるが、最近発行された10年債主体にポジションを落としてきた可能性がある。また、国債入札で直接都銀が落とした分は含まれていない。
国債投資家別売買高を基に集計すると、2013年度に都銀は超長期債を8011億円売り越し、長期債を3兆7322億円買い越し、中期債を16兆2627億円売り越していた。長期債の買い越しが多かったこともあり、4月は期初の益出しの目的もあってか売却額が膨らんだものと思われる。
ただし、4月の債券相場は長期債主体に相場が崩れた様子はない。長期債についての買い越しは地銀の8125億円の買い越しが目立った程度で、ほかに買いが目立ったところはなかった。しかし、日銀による国債買入がその分を含めてカバーしていたものとみられ、相場は落ち着いていた。
都銀が持つ国債のポジションについては、担保としても必要な分もあるため、一定額保有する必要があり、このままさらに大きくポジションを減らすことも考えづらい。ただし、他の業態と異なり昨年4月の日銀の異次元緩和以降、中期債主体に大きくポジションを減少させてきたことも確かである。
これは見方によれば日銀の大規模な買入に対応しているとも言える。都銀が売却することで日銀は大量の国債買入を容易にさせる。国債のポジションが都銀から日銀に移行し、さらに都銀は売却した資金を日銀の当座預金残高に置くことで、日銀のマネタリーベースを目標通りに増加させられる。日銀のための都銀による国債ポジションの調整と見えなくもないが、その分、都銀の保有する国債のリスクを多少なり減少させてきている。今後もし長期金利が大きく跳ね上がるようなことが起きると、都銀はそれによる損失を軽減できる。そこまで見越した動きであるのかは定かではないが、今後の都銀の動向にも注意する必要がある。