日銀の追加緩和はあるのか

昨年4月4日に日銀の量的・質的金融緩和政策(QQE)、いわゆる異次元緩和政策が決定して1年目を迎えた。今年4月の日銀の金融政策決定会合は本日4月7日と8日に開催される。

異次元緩和政策はバズーカ砲に例えられ、その後は戦力の随時投入はしないと日銀の黒田総裁は発言し有言実行となった。昨年4月の異次元緩和以降の金融政策決定会合では、昨年4月28日から今年3月11日まで都合13回の決定会合が開かれ、この13回すべてにおいて金融政策に関しては全員一致での現状維持が決定されている。

4月1日から消費増税がスタートしたが、これによる景気の落ち込みへの懸念から日銀の追加緩和期待が強まっている。本田悦朗内閣官房参与は3月25日に、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、追加緩和検討のタイミングとしては、4月からの消費税率引き上げの影響に関して、予想インフレ率や短観のDI、株価、為替などを見て、「ある程度先行性のある指標が落ちてきた場合は、金融緩和が必要だと判断される可能性がある」と指摘した(ブルームバーグ)。

債券市場はさておき、株式市場や為替市場での日銀による追加緩和への期待は根強い。欧米の中央銀行をみても、FRBはイエレン議長が利上げ時期を示すなど完全に出口戦略を取っているのに対し、ECBについては量的緩和を含めた追加緩和への期待がある。ユーロ高を食い止める上でもECBは追加緩和を実施するとの観測が、先日のECB理事会後のドラギ総裁の会見を受けて強まっている。

日銀については、もし追加緩和が検討されることになれば、ここが黒田日銀にとって大きな正念場となりうる。異次元緩和から1年間はとりあえず様子を見るとの審議委員も一部にいるといわれ、今後はリフレ政策の効果とそのリスクの評価について、日銀の政策委員の間で意見が分かれる可能性がある。

例えば3月20日の記者会見で、木内審議委員は追加緩和に関して、「私は量的・質的金融緩和」に賛成していますが、それと2%の物価安定の目標とを結び付けてはいないため、2年程度で 2%の目標を達成するのが難しくなったら追加緩和します、という考え方を私自身はしていません。」とはっきりコメントしている。

さらに追加措置には副作用が伴うことが考えられるとして、次のようにコメントしている。

「例えば、長期国債の買増しであれば、色々な副作用があり得ます。金融市場の機能を損なう、それを通じて金融機関の財務体質を脆弱にさせるということが考えられます。また、財政ファイナンスのリスクを高めてしまうとか、将来、金融政策を正常化する時に大きな問題が起こるかもしれないとか、金融市場を安定化させながら円滑な正常化を図ることがより難しくなってくるといった副作用を考えると、追加緩和に見合った副作用を正当化するようなイベントというのは、余程大きなショックということになると思います。私自身は、追加緩和を正当化するような条件というのは、非常にハードルが高いと感じています。」

この見方は木内委員だけの見方ではないと思われる。佐藤委員も講演で次のような発言をしている。

「自由な資本移動の下で中央銀行は万能ではない。たとえば、先ほどの名目長期金利の決定メカニズムに即して言えば、仮に、中央銀行が政府の調達コスト抑制のために国債市場への介入を増やしても、中央銀行による国債購入の増加が財政規律を弱めると市場に判断されれば、かえってプレミアム部分が上昇する可能性がある。」

中央銀行が国債価格をコントロール可能かどうかは、中央銀行の意図よりも市場の判断によるところが大きいと佐藤委員は指摘しており、仮に追加緩和でさらなる国債の大量買入が議案に上がった際には、その効果とリスクを天秤に掛けた上で、反対票を投じる可能性がある。

そもそも追加緩和で何を日銀は行うというのであろうか。さらなる国債の大量買入はその効果と副作用を秤に掛けるとむしろ打ち出しづらい。だから、本田参与は手段としては指数連動型上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(J-REIT)などリスク性資産のさらなる購入を挙げていた。これでは物価を上げるというより、株価などの資産価格の上昇を意識した政策と見なされる可能性がある。しかも市場規模から言えば、いくら大胆に買うといっても国債の購入規模とは比較にならないであろうし、市場機能に多大な影響を与える可能性がある。

日銀にとって追加緩和は非常に難しい判断を伴うことになり、消費増税による景気への影響が黒田総裁の言うように限定的であってほしいと願っているのではなかろうか。日銀のバズーカ砲とは実際の破壊力よりも、市場はその音に驚かされた。一度、聞いてしまったもので二度目のバズーカ砲の音による効き目は限定的なものになる可能性がある。そして、残ったのが日銀による大量の国債買入であったとすれば、いずれ佐藤委員の指摘したような、副作用が顕在化する恐れがある。これらを配慮すると日銀にとり、いつでも動けるとの姿勢を見せるだけで実は何もせず、物価が2%に上がってくるのを待つほかはないのではなかろうか。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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