米国の債務不履行(デフォルト)のリスク
米国議会では暫定予算を巡っての攻防が続き、政府機関の一部閉鎖は続いている。政府機関閉鎖に伴う米経済への影響も気掛かりながら、今月17日までに債務上限を引き上げる対応を議会が取らなければ債務不履行(default)に陥りかねない深刻な事態も迫ってきている。
10月2日に米国財務省は「Report on Macroeconomic Effect of Debt Ceiling Brinkmanship」というレポートを発表し、仮に債務不履行に陥れば金融市場や雇用、消費に破滅的な影響を及ぼし2008前のリーマン・ショック時の金融危機か、それ以上の打撃となると警告した。
米国では2011年にも債務上限引き上げを巡り、与野党での合意が得られず債務不履行のリスクが高まった。しかし、これは期限である8月2日に民主・共和両党指導部が合意したことで、ぎりぎりになって回避され、デフォルトは免れた。この際、協議が難航した要因として、ティー・パーティーの存在があげられていた。
米国の大手民間の格付会社スタンダード・アンド・プアーズは、その合意した数日後の8月6日に、自国である米国の長期格付けを最上位のAAAからAA+に1段階引き下げた。S&Pは1941年に米国の格付けを最上級格のAAAを付与していたが、米国債の格下げは初めてであった。
米国が債務不履行に陥るとどのような影響か出るのか。米財務省のレポートは、ドルと財務省証券は国際金融システムの中心にあることで、壊滅的な事態になる恐れがあると指摘している。ドルが急落し、米国の長期金利の急上昇により世界経済に悪影響を及ぼし、リーマン・ショック時かそれ以上の金融危機やリセッション(景気後退)を引き起こしかねないとしている。
ただ、現実にはそれほどの影響は与えないのではないかと予想される。もしデフォルトが発生したとしても、あくまでこれは技術的な問題であり、2010年のギリシャのような信用不安が発生するようなことは考えづらい。ただし、ドルは世界の基軸通貨であり、米国債は世界の金融商品にあって中心的な役割を果たしている以上、まったく影響が出ないとたかをくくるわけにはいかない。
金融市場にあっては信用が最も重要である。特に通貨や国債への信用維持はそれが金融市場の根幹を成しているともいえることで、最大限信用を維持させる必要がある。それを少しでも毀損させるようなことは、避けられるものは極力避けるべきものである。安倍首相が来年4月からの消費増税を表明したのも、国債への信認維持のためであったはずである。米国も与野党の意地の張り合いで、自国の信用を傷つけ、それが世界経済に悪影響を与えることは極力慎むべきであり、もしデフォルトを起こしてしまうと歴史に汚点を残すことになることを認識すべきである。