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日銀短観は大きく改善

久保田博幸金融アナリスト

7月1日に発表された6月調査の日銀短観において、業況判断指数(DI)は大企業製造業がプラス4となり、3月の前回調査から12ポイント改善した。プラス圏内に浮上したのは2011年9月調査(プラス2)以来1年9か月ぶりとなる。9月予測はプラス10となった。非製造業はプラス12と前回から6ポイント改善した。9月予測はプラス12となった。

中堅製造業はマイナス4となり、前回調査から10ポイントの改善。9月予測はマイナス3となった。中堅非製造業はプラス7となり、前回調査から3ポイント改善、9月予測はプラス7となった。

中小製造業はマイナス14となり、前回調査から5ポイントの改善。9月予測はマイナス7となった。中小非製造業はマイナス4となり、前回調査から4ポイント改善、9月予測はマイナス4となった。

2013年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比5.5%増と、前回調査の同2.0%減から大きく上方修正された。

今回の短観の回答期間は5月28日~6月28日。調査対象企業は10623社で回答率は99.0%。2013年度の想定為替レートは通期1ドル91円20銭となっていた。

回答期間が5月末からとなっており、5月23日以降の株価の調整も意識されての数字となっており、かなり強めの数字ともいえる。

アベノミクスによる円安・株高に加え、米国経済の回復などにより、企業経営者の景況感の改善に働きかけているものと思われる。円安もあり大企業製造業の景気判断がプラスに浮上したことも大きい。過去の推移をみると日経平均株価と大企業製造業DIはトレンドを形成する際の目先の底入れや天井の目安となっていたが、今回も昨年12月調査分でいったん底入れした格好でその後、改善傾向となっており、昨年11月以降の日経平均の回復と同じような動きとなっている。先行き予測からみても日経平均にはまだ上昇余地があるように思われる。

今回は設備投資計画の改善幅も予想以上に大きいものとなった。異次元緩和により、期待に働きかけられたということなのであろうか。5月の全国CPIは前年比0.0%とマイナスを脱し、いずれ前年比プラス0.5%近辺までの上昇が見込まれている。ただし、これは異次元緩和以前からも予想されていたものであり、インフレ期待の強まりが大きく影響したわけではない。とは言うものの、景況感がこのまま改善していけば、設備投資や個人消費が回復し、それに応じて物価も上昇してくることが予想される。それも日銀の金融政策次第というより政府による成長戦略の影響の方が大きいように思われる。

債券市場への影響については、短観そのものは上値を重くさせる要因となる。しかし、5月23日に長期金利が1.000%をつけてからの動きをみると、積極的に売り手もおらず、値動きはそこそこあるものの、方向感に乏しい展開が続いている。特に6月の債券相場がそうであった。ただし、7月となりあらためて方向感が出てくる可能性もある。米FRBの動向とともに、参院選の行方などにも注意しておきたい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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