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超長期国債先物の再開

久保田博幸金融アナリスト

日本取引所グループは6月18日に、デリバティブ市場の統合(大証と東証)を控えて制度整備要綱を公表した。このなかで、2014年4月から超長期国債先物取引を再開する方針を正式に表明した。

債券先物といえば、通常は長期国債先物を示す。日本初の金融先物取引として1985年10月に東証に上昇され、日本のデリバティブ市場の草分けとなるとともに、債券市場においても大きな影響力を持っている。

ところがこの長期国債先物の使い勝手が良いばかりに、ほかの債券絡みの先物は上場してもなかなか売買高は膨らまず、債券先物に関しては売買面からみて、ほぼ長期国債先物の独占状態となっている。債券に関する東証に上場している先物には取引残存期間5年・利率3%の中期国債を標準物とした中期国債先物、残存期間20年・利率6%の超長期国債を標準物とした超長期国債先物、そして2009年3月からスタートした取引単位を長期国債先物の10分の1としたミニ長期国債先物がある。このうち超長期国債先物取引は2002年12月限月以降、新たな限月取引を休止している。中期国債先物取引もほとんど売買がなく、ミニ長期国債先物も開店休業状態にある。

東証と大証の経営統合により、長期国債先物など現在、東証に上場しているデリバティブ関係の商品は大証のシステムに統合される。このため債券先物のシステムも大証管理のものに2014年3月に統合される。この機会に超長期国債先物も再開されることになったのである。超長期国債先物の再開理由としては、4月4日の日銀の異次元緩和後に超長期国債の流動性が著しく低下したことも影響した可能性がある。ある程度流動性のある超長期国債先物が機能していれば、こういった際にヘッジも可能となる。

2014年3月の大証システムへの移管にともない、長期国債先物の取引にも変更がある。現行のシステムでは誤発注予防のため呼値可能値幅が設定されているが(例えば長期国債先物はザラ場中は20銭等)、これが即時約定可能値幅となり、上下10銭を飛んで動くような場合にはいったん板寄せのような格好となり、昔のスタイルに戻る。さらに現在、成り行き注文は出せないが、引け成り行きの注文も可能となるようである。取引時間帯についてはイブニング・セッションが午前3時まで延長される。

2014年4月に再開される超長期国債先物については、標準物のクーポンは6%(長期も6%)、取引単位1億円(同1億円)、呼び値の刻みは100円につき5銭(同1銭)、即時約定可能値幅は30銭(同10銭)、受け渡し適格銘柄は残存18年以上21年未満の20年利付国債(同残存7年以上11年未満の10年利付国債)となっている。値幅制限に関しては9.0円(同3.0円)となっている。サーキット・ブレーカー制度についてはまだ具体的な発表はない。取引手数料も超長期は未定となっている。

果たして超長期国債先物が上場再開して、売買高が膨らむであろうか。過去の経緯を見る限り、個人的にはあまり期待は持てない気がする。取引を停止した2002年に比べて超長期国債の発行額や残存額は大きく増えているが、日中先物で頻繁に売買するにはそれなりの使い勝手も求められる。少しでも超長期国債先物への投資家などの使い易さを高める工夫も必要ではないかと思われる。今更、制度そのものの変更は難しいかもしれないが、クーポン設定を無理に長期に合わせずに中期債先物と同様の3%程度にして、実勢利回りに近づける。さらに取引単位をミニ同様の1000万円にするだけでも、投資家の関心を呼ぶのではなかろうか。実際に取引単位の引き下げを求める声は国内投資家からも聞こえている。

超長期国債先物にある程度の流動性が出てくれば、ヘッジニーズが強まるとともに、イールドカーブの動向を睨んだ長期国債先物との裁定機会も拡がる。超長期国債先物の流動性向上に向けて、大胆で異次元の改正を行うことで、債券先物全体の売買高拡大に向けた期待に働きかけるというのはどうであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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