異次元緩和後の日本の投資家の動き
4月25日に財務省は4月14日~20日の対外及び対内証券売買契約等の状況を発表した。これによると、この期間の対外債券(中長期債)投資は8626億円の資本流入超となっていた。つまり日本の投資家は外債を買っていたのではなく、差し引き8626億円売っていたということになる。その前の週も3328億円売り越しとなっており、これで6週連続の売り超しとなっていた。
4日の異次元緩和により、日銀は国債のイールドカーブ全体の低下を促すことを目的に、長期国債の保有残高が年間50兆円に相当するペースで増加するよう買入を行う。長期国債の買入対象を40年債を含む全ゾーンとし、買入の平均残存年数を現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長する。この結果、毎月の長期国債のグロスの買入額は7.5兆円規模(これまでは3.8兆円程度、4月の買入予定額は6.2兆円)になる。2013年度の長期国債のカレンダーベースの発行予定額は126.6兆円となっており(年間発行額156.6兆円から短国の30兆円を差し引いたもの)、7.5兆円の12か月で88.7兆円をグロスで日銀が購入するとなれば、毎月の発行額の70%を買い入れることになる。
これまで超長期債の主たる買い手となっていた生保・年金、さらには一部海外投資家等は利回りの低下もさることながら、流通市場の縮小もあり、今後は日本国債への投資を縮小することが予想され、欧米の海外市場では思惑的な買いも入っていた。しかし、現実には日本の投資家は外債を買うどころか、むしろ欧米の債券の利回り低下で利食い売りを出していたと思われる。
いわゆる機関投資家は、そう簡単に年度の運用計画を修正することはできない。4月4日の異次元緩和を受けて、すぐに外債投資の比重を高めると言った動きはしてこない。ただし、債券市場に動揺が見えるなどしたことで、今年度の運用計画そのものを白紙にし、あらためて計画の練り直しを行ったところも多かったようである。
すでにいくつかの生保の運用の見直しが発表されているが、そのほとんどは確かに国内債を抑制し、外債を積み増すというものではあるが、それほど大きな修正ではなかった。これは為替リスク等もあるが、そもそも欧米の主要な国債利回りがかなり低下しているという事情も影響していると思われる。
ちなみの14日から20日の対内債券(中長期債)投資は1993億円の流出超に、前の週も1763億円の流出超となっていた。短期債も流出増となり、異次元緩和を受けていったん海外投資家は円債を売ってきているようである。こちらは、4月4日の異次元緩和以降の日本の債券市場の荒れ具合を見て、ポジションを減らしてきたと思われる。
いずれにしても、それほど大規模な資金の移動が生じているわけではないものの、今後は日本の国債の流通市場が日銀の介入により、縮小することが予想され、投資家もそれに備えた動きをせざるを得ない。国債市場の機能低下も予想され、それが異次元緩和の導入以降の超長期債市場に現れている。この動揺は時間とともに収まるかもしれないが、今後は以前ほど国債市場が安定するとは考えづらい。不安定な市場となれば、それだけ市場参加者も神経質になりかねない。つまり長期金利が何かのきっかけで跳ね上がりかねないという環境になりつつある。このあたり、政治家や日銀関係者は、言動に細心の注意を払う必要もあろう。