円安株高でも債券が買われた理由
2月6日に外為市場でドル円は94円台に、日経平均は400円以上の上昇となり11500円に接近した。それにも関わらず債券も買われ、債券先物は再び144円台を回復している。債券先物の過去最高値は12月11日につけた145円30銭であり、144円台というのはかなりの高値圏にいるということになる。
円安株高にも関わらず、債券が売られない理由とは、最終的には需給という他はない。円安の背景には、欧州の信用不安の後退による部分が大きいが、円安による海外投資家による日本国債売りもいまのところ限定的であり、それ以上に海外投資家の主たる投資先でもある中短期債の需給が締まっているためと考えられる。
ちなみに債券から株、株から債券への資金シフトという表現が使われることがあるが、国内投資家を中心にアセット・アロケーション、つまり資金の配分をそうそう簡単に変更するようなことはできないし、そもそも絶対的な金額が異なるため、実際にはそのような動きは起きづらい。海外のヘッジファンドなどが株先を買って債先を売るみたいなことはあるかもしれないが、巨額の資金を運用している年金や生保などが、アベノミクスだと騒いでいきなり国債を売って株を買うなどということは考えづらい。今回の債券相場の強さには、むしろこのアセット・アロケーションを簡単に動かせないことも影響しているとの指摘がある。
今回、中短期債が買われているのは需給の強さがその背景にある。それに対して超長期債については、依然として上値の重い状態が続いている。20年債などにはこれまで投資家による売りなども入り、生保なども買いには慎重となっている。すぐに2%の物価目標を達成することは困難であるものの、世界的なリスク後退の動きとそれによる急激な円安株高等を見ると、なかなか長い期間の債券は買いづらくなっているとみられる。長期債についても中短期債に比べれば、比較的上値が重くなっている。
債券先物は現在の金利の位置からはチーペストと呼ばれる7年債に連動するものとなっており、5年債の利回り低下などの影響を受けやすい。その5年債は2年債などの利回り低下の影響を受けていると思われる。そもそも2年債の利回りが7日に0.025%まで低下したのはどうしてなのか。そのあたりに今回の債券相場の強さの理由が隠されているように思われる。
1月31日の2年債入札において、市場推計による業者による落とした金額が前回に比べて急減していた。自分で落とした金額を明らかにしていない一部の業者はいるものの、金額があまりに乖離していたことで、これは一部大手銀行が直接落としたのではないかと推測された。このため、本来落とすはずの金額が落とせなかった業者が、買い戻しを入れたことが、2年債の利回り低下を促した面がある。
さらにその2年債にはパッシブ運用(指数に合わせる機械的な運用)をしている年金などから継続的な買いが入っているようである。つまり急激な円安・株高を背景に、円債のアセット・アロケーションの割合が相対的に低下してしまったため、その調整として新規で入ってきた資金を主に円債に振り向けることになり、その資金が2年債などに向かっているとされる。それでなくても需給バランスがやや偏ったところに、このような継続的な買いも入り、踏み上げ相場のような格好となっていたとみられる。
2年債の利回り低下はやや異常ともいえるが、短期債の利回りも低下しており、6日の日銀による基金による国債買入の最低利回りが0.070%をつけていた。これについては日銀の買入のスケジュールと国庫短期証券の入札スケジュールの関係等も影響した可能性はあるが、日銀が大量に中短期債を購入し続けている半面、銀行や海外投資家含めて短期債へのニーズが強いことで、短期債の需給が締まっている面もある。
日銀という強力な買い手の存在を背景に短期債の需給が締まっている状況は、2年債にも変わりはない。ただし、2年債が突出して利回りが低下している背景には、2年債の入札動向、年金などの買い以外に何らかの別な要因による動きの可能性もあるのかもしれない。今後も日銀には追加緩和圧力は掛かりやすい。日銀総裁人事も控えてそのような思惑も呼びやすい。超過準備への付利の引き下げや撤廃については、実際にその可能性は薄いとみているが、国債の買入増額等の可能性は高い。このあたりも含めて、一部の投資家が2年債への投資を膨らませている可能性もある。期末を意識して残高を積み増している可能性などもあるが、いずれにしても中短期債ではバブル相場のような動きが出ており、今後の動向について注意も必要となる。