OPEC減産延長、なぜ原油価格は上がらなかった?

(写真:ロイター/アフロ)

石油輸出国機構(OPEC)は11月30日、定例総会を開催して今年1月からロシアなどと実施している協調減産について、現在の2018年3月末から12月末まで9カ月延長することで合意した。今回の協調減産は世界の石油供給の約2%を減産することで、シェールオイル増産などで積み上がった過剰在庫の解消を目指すものだが、これで2回目の期間延長になる。OPECやロシアなどが協調減産によって、国際原油需給環境を正常化することに強い意欲を示した格好になる。

OPECのプレスリリースによると、指標となる経済協力開発機構(OECD)加盟国の石油在庫は、在庫正常化の基準とされる5年平均に対して5月時点で2億8,000万バレル上回っていたが、10月時点では1億4,000万バレル上回る所まで、過剰在庫を圧縮することに成功している。しかし、従来の期限とされていた2018年3月末までに過剰在庫を一掃するのか不透明感が残る中、協調減産を継続する必要性で合意し、今後も在庫削減を働き掛けることで、原油需給・価格環境の正常化を目指すことになる。

OPEC総会前には、協調減産の合意形成は難しいとの見方もあったため、今回の合意内容は基本的には原油価格に対して押し上げ要因になる。最近の原油価格高騰を受けてロシアが協調減産の延長に消極的になっていたため、シティ・グループなどは、来年まで判断を先送りする可能性も指摘していた。事前の原油市場では協調減産の合意ができるのか不透明感から、投機筋が買いポジションを整理して様子見に転じる動きも目立っていた。

しかし実際には、9カ月の減産期間延長という原油価格の強気派にとっては歓迎すべき動きが実現したにもかかわらず、原油価格は伸び悩んでいる。国際指標となるNYNEX原油先物相場の場合だと、1バレル当たりで前日比0.10ドル高の57.40ドルとほぼ横ばい状態に留まっている。なぜ原油価格は更に高騰しなかったのだろうか。

■原油高が進まなかった二つの理由

一つ目の原因が、11月29日の段階で9カ月の減産延長が規定路線になっていたことがある。今回の協調減産では減産合意を着実に履行するために、減産閣僚委員会(JMMC)と呼ばれる主要産油国による監視体制を構築している。協調減産の修正はこのJMMCの勧告に基づいて協議されるが、OPEC総会の前日となる11月29日のJMMCにおいて、協調減産の9ヵ月延長が勧告されていたのだ。このJMMCにはサウジアラビアの他にロシアも加わっており、ロシアがJMMCでの9カ月延長勧告を容認した以上、9カ月の減産延長合意は規定路線になっていた。いわゆる「織り込み済」や「材料出尽くし」と言われる状況である。

もう一つの原因が、シェールオイルとの競合激化に対する警戒感である。実は今回の協調減産延長には従来にはない条件が付与されており、それが2018年6月に政策調整を行うかを検討するとの文言である。すなわち、18年末までの減産延長を基本としつつも、今後の状況次第では6月時点で現在の協調減産対応を見直す可能性を残しているのである。

これまで実施してきた協調減産は原油価格押し上げに大きな成果を挙げているが、それに伴って増産圧力が鈍化していたシェールオイル産業の動きが再び活発化している。このため、闇雲に協調減産を実施してもシェールオイルの増産加速を促すだけで、協調減産の実施国は何も恩恵を受けられないリスクに対する警戒感が強まり始めている。

長い目でみれば、世界石油需要は前年比で日量150万バレル前後の伸びが想定されており、シェールオイルの増産のみでカバーできる状況にはない。現在、シェールオイルは前年同期比で100万バレル程度の増産状況にあるが、マーケットでは投資不足による将来的な供給不足を警戒する声も根強い。今回のOPEC総会でもUAEは50ドルでは必要とされる投資ができないとの悲鳴を発している。既にイランやイラクなどの急激な増産が一巡する中、ここ最近の原油高は早ければ2018年にも訪れる供給不足に対する「警告」とみる向きも少なくはない。

ただ今後は、2018年中にも協調減産を解消する「出口」を議論する必要がある一方、足元ではシェールオイルの増産圧力が加速し始めており、原油高が過熱することでシェールオイルの増産加速を許容するのは時期尚早との見方が、原油相場の上値を抑え始めている。中長期的にはOPECやロシアなどの伝統的産油国と、シェールオイル産業が共存できる形での原油高に向かう可能性が高く、最近の原油価格高騰は必ずしも限界だとは考えていない。ただ、現時点でシェールオイルが急激な増産を行うことで需要の伸びをカバーする必要はないとの評価が、当面の原油価格の上昇余地を限定することになる。