Yahoo!ニュース

NY原油28日:米原油在庫はピークアウトとの見方で、急反発

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

NYMEX原油12月限 前日比2.74ドル高

始値 43.44ドル

高値 46.01ドル

安値 43.06ドル

終値 45.94ドル

米原油在庫の増加傾向が一服するとの見方から、安値是正の動きが優勢になった。

アジアタイムはAPI発表の原油在庫が前週比+410万バレルに達したことなどを受けて、戻り売り優勢の展開になった。ただ、43ドル台前半まで下押しするのに精一杯であり、その後は安値是正の動きが優勢になった。特に、米エネルギー情報局(EIA)の週間需給統計発表後は、製油所稼働率の上昇が材料視され、一気に安値是正の動きが優勢になっている。44ドル、45ドルの節目水準で売り玉のストップロスを巻き込む動きもあり、上げ幅を拡大した。

EIA発表の原油在庫も前週比+337.6万バレルの4億7,996.3万バレルとなっており、増加トレンドを維持している。前年同期を1億バレル前後上回った状態にも変化はみられない。ただ、製油所稼働率が前週比+1.2%の87.6%と大きく上昇したことで、メンテナンスシーズンの終了時期が近づいているとの見方が、売りポジションに整理を迫った模様。87.6%は決して高いレベルではないが、冬の暖房油シーズンに向けて稼働率が上昇すれば、必然的に原油需要は拡大することになる。それが在庫の取り崩しを促すのか否かは別問題だが、米国内の需給緩和状態は当面のピークを確認したとの見方が、投機売り攻勢にブレーキを掛けている。

過剰供給の長期化懸念、極めて高いレベルの在庫水準などを考慮すれば、原油相場の反発余地は限定的との見方に変化はない。ただ、ここ最近の下げ相場は、「米国の原油在庫が増加傾向にある」ことも一因になっていただけに、米国内需給環境が変化を見せれば、弱気のセンチメント是正の動きが強まるリスクには注意が必要。季節要因からはまだ在庫の取り崩しが本格化する状況にはないが、原油相場を下押しする一つの材料が消滅する可能性が浮上していることには注意が必要。安値低迷が継続するとの基本見通しに変化はないが、この時期の下値攻略に失敗すると、暖冬といった新たなネガティブ材料が要求される。

画像
マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

小菅努の最近の記事