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NY原油21日:米原油在庫増加を警戒し、調製売りで反落

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油5月限 前日比1.12ドル安

始値 56.41ドル

高値 56.91ドル

安値 55.01ドル

終値 55.26ドル

米週間需給統計の発表を前に、調整売りが先行して反落した。

明日は米在庫統計の発表を控えているが、在庫増加で米国内需給の緩和状態が示されるとの見方から、調整売りが先行した。市場予測は前週比+100万バレルとなっており、シェールオイルの生産鈍化を前提にしても、在庫積み増し圧力が再確認される見通し。最近の原油市場では、在庫から示される需給緩和状態よりも、シェールオイル生産から示される生産調整の動きを評価する傾向が強い。こうした中、改めて過去最高水準の在庫が上値圧迫要因として認識されるのかが注目される。なお、引け後にはAPIの在庫統計が発表されているが、原油在庫は前週比+550万バレルと、在庫積み増し傾向が続いていることが確認されている。

世界最大の石油取引会社Vitolのテーラー最高経営責任者(CEO)は、英FT紙のコモディティ関連イベントに出席し、原油価格が底を打ったとの見方を示した。需要に関しては、低価格に刺激されたものか、経済成長に基づくのかは不透明としながらも、前年比で日量100万バレルの増加が見込めるとしている。また、イラン産原油の市場復帰が年内に実現しなければ、底打ちの可能性は更に高まるとしている。

今週の統計でも米国内のシェールオイル生産は抑制される見通しであり、これを手掛かりに改めて買いが膨らむのかが焦点になる。冷静に需給環境を検証すれば、仮にシェールオイルの生産が日量数万バレル減少したとしても、大きな意味はない。それ以上に石油輸出国機構(OPEC)からの供給が増えており、供給サイドで需給引き締め圧力が強まるような環境にはない。短期トレンドは明らかに上を向いているが、今後は高値是正の必要性が強く、下値不安の大きい価格水準と評価している。ただ、季節要因から米国内の原油在庫の伸びが鈍化し易いこともあり、原油市場では引き続き強気ムードが支配的である。この流れに、過去最高水準の在庫がブレーキを掛けるか否かが、明日の焦点になる。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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