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原油高が続くも、OPEC総会が増産を決定できなかった理由

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

石油輸出国機構(OPEC)は6月11日、ウィーンで開催された第165回総会において、日量3,000万バレルの現行生産目標を据え置くことを決定した。これで生産目標の据え置きは5会合連続であり、OPECとしては産油政策の大幅な変更を行う必要性を認めなかった形になる。

今会合の焦点は、「下期の需要拡大期に向けてOPECとしてどのように取り組む姿勢を示すのか」の一点だった。シェール革命が実現した北米では大規模な増産圧力が続いているが、世界経済の復調で石油需要も従来の想定を上回るペースで拡大する中、夏のドライブ・シーズンというガソリン需要期、冬の暖房用需要期に対して、OPECの重要性が増しているためだ。例えば、国際エネルギー機関(IEA)は5月に発表した月報において、OPECが下期に日量90万バレルの増産を行う必要があると、具体的な推計を発表している。

このため、OPECとしては生産目標引き上げの選択肢もあったはずだが、1)OPECバスケット価格が105ドル前後の「適正」水準にあること、2)足元で特段の供給不足が発生していないことを理由に、増産対応の必要性を認めなかった。

ただこうした表面的な議論とは別に、OPECが本当に警戒しているのは、これまで欧米の経済制裁で大規模な減産を強いられてきたイランの市場復帰リスクである。現在、イランの核開発交渉は佳境に差し掛かっており、早ければ今年下期にはイラン産原油が輸出入市場に本格復帰する可能性がある。

このため、消費国の要望に応えて早めに産油量を引き上げることで、逆に「供給過剰→原油安」となるリスクが警戒されている訳だ。

このままイランの市場復帰が遅れれば、OPECの増産対応の遅れは原油価格を一段と押し上げる可能性が高い。今回の増産対応見送りは、リスクが高い決断であったはずだ。一方、逆にイランの市場復帰が実現すると、原油価格高騰を背景に増産を進めてきたOPECの他加盟国は減産と言う形で、イラン市場復帰の「席」を用意する必要性が高まる。だが、原油売却収入の減少を招く減産には消極的な国が多い中、OPECとしては需要拡大には非公式でギリギリの増産を行い、イラン情勢の進展を見極めたいとの計算が働いたと考えている。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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