A代表では2011年以来の対戦。アジアカップ0勝14敗

 長らく延期されていた『FIBAアジアカップ2021予選』が6月16日からフィリピン・クラークにて行われる。この予選は8月17日から29日にインドネシア・ジャカルタで開催される『FIBAアジアカップ2021』の出場権をかけた予選となる。2017年まではサブゾーン予選(日本ならば東アジア選手権)を経てアジアカップ(旧アジア選手権)出場に至ったが、2017年以降は4年に一度の大会となり、全大陸共通でホーム&アウェー形式の予選が開催されることになった。

 今回は、昨年11月と今年2月に予定されていた未消化分の3ゲームをフィリピンで集中開催して行うことになった。日本は中国、チャイニーズタイペイ、マレーシアと同組で、すでに昨年2月にチャイニーズタイペイに96-57で勝利している。今回は同組のマレーシアが辞退したことにより、3チーム間で予選が行われ、グループ上位2チームに入れば本戦出場確定。グループ3位であれば8月にプレーオフによって出場権が決定する。

 今回の予選は確実にアジアカップの切符をつかむとともに、選手たちは「オリンピックの選考でもある」(富樫)ことを強く意識しているため、ただの予選とは捉えていない。オリンピックへの強化も兼ねた大会となるわけだ。

 チャイニーズタイペイは5月11日に23名の候補メンバーを発表。今回はCBA(中国プロバスケットボールリーグ)でプレーする主軸が選考されず、大幅な戦力ダウンが予想される。そんな中で、最大のライバルとなるのは中国だ。

 A代表と位置づけされる中国と公式戦で対戦するのはなんと10年ぶり。2011年のFIBAアジア選手権(現アジアカップ:ロンドン五輪予選/武漢)以来だ。当時は2次ラウンドで対戦して58-84で完敗している。中国はアジアカップ以下の大会はB代表や若手と位置づけた代表が出場することが多く、W杯予選でも別グループだったため近年は対戦の機会がなかった。日本(A代表)はこの10年間、中国若手・B代表には勝利しており、記憶に新しいところでは、2014年のアジア競技大会(韓国・仁川)では逆転勝利を収め、2017年の東アジア選手権(長野)でも勝利を上げている。しかしA代表戦となると久しく対戦がないどころか、アジアカップでは過去に勝利したことがなく対戦成績は0勝14敗だ。

◆FIBAアジアカップ(2015年まではアジア選手権)中国との対戦成績

CBA2020-21シーズンのMVP吴前(ウー・チェン)。得点力がある切れ味鋭いガード。写真/FIBA.com
CBA2020-21シーズンのMVP吴前(ウー・チェン)。得点力がある切れ味鋭いガード。写真/FIBA.com

インサイドが手薄な世代交代チーム

 10年間も対戦していない中国A代表はどんな陣容なのか? 今回の中国代表はベストからは離れたメンバー構成になってしまった。「しまった」というのは、今回の人選は意図したものではないということだ。今年の中国は、アジアカップ予選はもとより、6月29日から開催されるオリンピック最終予選(OQT)をメインにチームを結成する予定で27名の候補を招集していた。その顔ぶれはベテランから中堅、新世代まで現状の最強メンバーであり、杜鋒(Du Feng)ヘッドコーチは「幅広いキャリアの選手を集めて強化し、ここから新しい中国代表を作っていく」と声明を出していた。

 ところが、強化合宿中に次々と負傷で選手が脱落し、ついには大会直前に中国代表の顔である易建聯(YI Jianlian/213センチ/33歳/広東)、郭艾倫(GUO Ailun/189センチ/27歳/遼寧)、王哲林(WANG Zhelin/214センチ/27歳/福建)も負傷のために代表チームを去ることになった。それでも、NBAヒューストン・ロケッツでプレー経験があるセンターの周琦(ZHOU Qi/216センチ/25歳/新疆)が最後の砦として残っていたが、これまた出発直前に左目(網膜)の不調を訴えて手術しており、フィリピンには遅れて合流。今予選に出場するかどうかは未定である。(易建聯はもともとアキレス腱を負傷して2020-21シーズンはリハビリ中だった)

 さらには、すでに中国の中核を担う選手に成長している胡金秋(HU Jinqiu/211センチ/23歳/新疆)とケガから回復した丁彦雨航(DING Yanyuhang/201センチ/27歳)が3人制の五輪候補に招集されたこともあり、ウイングとインサイドの選手が手薄になっている。アジアカップの出場権を得ることが目的であれば、今回の顔ぶれでも問題ないだろう。しかし本番はオリンピック最終予選であることを考えれば、物足りないメンバーだと言える。中国国内では経験のなさから「史上最弱」の声もあり、最終的には世代交代を目指したメンバー構成となった。

 中国は1984年のロサンゼルス五輪以降、はじめてオリンピック出場を逃す危機に立たされている。本来であれば、自国開催の2019年FIBAワールドカップで躍進することを目指していたが、グループラウンドのポーランド戦で延長に持ち込まれて大逆転負けを喫してから立て直すことができず、決勝トーナメント進出を逃したばかりか、大陸最高順位に与えられるオリンピックの出場権を得ることもできなかった。また感染症のパンデミックを理由に、7月開催のU19ワールドカップまで辞退している。強化体制を根本的に見直す時期に来ているのだ。

 ヘッドコーチの杜鋒はフィリピンに出発する前に「現在の中国代表は過去20年でもっとも困難な時期である。この大会では2024、2028年オリンピックを目指す次世代メンバーを育てていく」と発言している。

2019年にはアルバルク東京と対戦。成長著しいガードの胡明軒(フー・ミンシュエン)写真/FIBA.com
2019年にはアルバルク東京と対戦。成長著しいガードの胡明軒(フー・ミンシュエン)写真/FIBA.com

新しいタイプのガード&海外組が台頭

 とはいえ、サイズがある中国はアジアの脅威であることに変わりはない。世代交代を目指す中で、CBAでの活躍ぶりから注目選手をあげてみたい。

 今、中国でいちばん勢いがあるのは “MVPコンボガード” の2人、レギュラーシーズンMVPの1 吴前(WU Qian/190センチ/26歳)とファイナルMVPの3 胡明軒(HU Mingxuan(191センチ/G/23歳)だ。中国代表としては190センチの選手がスコアラーを務めることは珍しいのだが、SGとしてはサイズのなさを補うスピードとボールコントロール力を持ち、これまでの中国代表にはあまりいないタイプの躍動感あふれるガードとして台頭してきた。2020-21シーズン、吴前(WU Qian)が叩き出したスタッツは平均19.6点、3.5リバウンド、7.8アシストで堂々たる数字を残している。(CBAは48分ゲーム)

 胡明軒(HU Mingxuan)は2019年にアルバルク東京が王者となったFIBAアジアチャンピオンズカップのグループラウンドで対戦している広東サザンタイガースの選手。当時の広東は若手が出場しており、そのときからポテンシャルの高さは光っていたが、この2年間での成長は目覚ましい。当時はポイントガードを務めることもあったが、現在はサウスポーから放たれる3ポイントがいちばんの武器だ。代表キャリアの浅いこの2人がどこまでやれのるか、自国では注目されている。

 郭艾倫(GUO Ailun)不在の中で司令塔としてチームを束ねるのは4 趙継偉(ZHAO Jiwei/185センチ/25歳)。2015年アジア選手権で鮮烈なA代表デビューを飾り、2016年リオ五輪と2019年W杯にも出場している。25歳ながら国際経験のキャリアがあるガードだ。

 このチームのまとめ役を担うのはウイングの得点源10 周鵬(ZHOU Peng/206センチ/30歳)。2019年W杯では主軸として期待されながらも負傷で出場できなかったこともあり、待望の代表復帰と言える。インサイドではウイングスパンが222センチもある14 沈梓捷(SHEN Zijie /211センチ/24歳)が成長中だ。CBAでもセンターとして着実に役割を果たしており、代表チームでの実績を積み上げようとしている。

初のA代表デビューを飾る“中国の未来”張鎮麟(ジャン・ジェンリン)写真/FIBA.com
初のA代表デビューを飾る“中国の未来”張鎮麟(ジャン・ジェンリン)写真/FIBA.com

中国の未来はアジアの脅威。初代表ケビン・ジャンに注目

 今予選でもっとも注目したいのが「ケビン・ジャン」の愛称を持つ8 張鎮麟(ZHANG Zhenlin/205センチ/22歳)。母の王芳はバルセロナ五輪の銀メダリスト。14歳から渡米し、名門モントバード高校からNCAA ディビジョン1のテュレーン大で2年プレー。2020-21シーズンからは帰国してCBAの遼寧でプレーしている。CBAでの一試合最高得点は46点。文句なしの新人王を受賞した “中国の希望” が代表デビューを飾る。

 張鎮麟に代表されるように、これからの中国には未来が待っている。これまでビッグマンを多く輩出しながらも育成に結びつかなかったのが近年の中国だが、海外進出をしている若手選手が多いことがこれまでとの違いで、次世代には大きな期待が寄せられている。

 今回、最終候補に残った中では、ゴンザガ大へのコミットを撤回してGリーグ・イグナイト入りを表明した曾凡博 (ZENG Fanbo/206センチ/18歳/北京)、未知数ながらそのサイズが注目されている余嘉豪(YU Jiahao/220センチ/18歳/浙江)、2018年U18アジア選手権で注目され、アメリカの高校からペンシルバニア大に進んだ王泉澤(WANG Quanze/208センチ/21歳) らがいる。彼ら3人はアメリカに留学していたものの、コロナウイルスの影響によって帰国して今季はCBAでのプレーを選んだ選手たちだ(王泉澤は2021-22シーズンからCBAでプレーする予定)。これらの選手は一例であり、他にもサイズを備えた「海外組」が多数いることからも、やはり中国はアジアの脅威と言えるだろう。図らずも世代交代チームで臨むことになったアジアカップ予選が復活の始まりとなるのだろうか。

 サイズでは中国に分があるとはいえ、国際大会とプロのキャリアでは日本のほうが上回るだけに、2連勝をもぎ取りたい。同時に、代表シーズンのスタートであることから、このアジアカップ予選でゲーム勘を取り戻し、強化を兼ねた実りのあるオリンピック選考レースとなることを求めたい。10年ぶりの中国A代表との試合は様々な意味で注目となる。

中国代表 FIBAランキング29位 

ヘッドコーチ/杜鋒 Du Feng(広東) 

1 吴前 WU Qian(190/G/26歳/浙江)

2 徐傑 XU Jie(180/G/21歳/広東)

3 胡明軒 HU Mingxuan(191/G/23歳/広東)

4 趙継偉 ZHAO Jiwei(185/G/25歳/遼寧) 

8 張鎮麟 ZHANG Zhenlin(205/F/22歳/遼寧) 

10 周鵬 ZHOU Peng(206/F/31歳/広東)

12 任駿飛 REN Junfei(205/C/31歳/広東) 

13 劉傳興 LIU Chuanxing(225/C/21歳/青島)

14 沈梓捷 SHEN Zijie(211/C/23歳/深圳) 

16 陸文博 LU Wenbo(194/G/23歳/浙江)  

21 王少傑 WANG Shaojie(208/C/24歳/北控)

25 趙岩昊 ZHAO Yanhao(193/G/23歳/広厦)

6月16日 日本戦エントリー外

周琦 Zhou Qi(216/C/25歳/新疆)

祝銘震 Zhu Mingzhen(195/F/25歳/広州)

※名前は姓→名の順

※身長はセンチを省略 例)190センチ→190

※地名等はCBA所属チーム

FIBAアジアカップ予選とW杯&五輪の関係性

8月のFIBAアジアカップに出場する16チームが、今年11月から始まる『FIBAワールドカップ2023一次予選』に参戦することができる。2019年大会からワールドカップは世界一を決定する大会であるとともに、ダイレクトに7ヶ国が五輪出場権を獲得する大会になったことから、今回のアジアカップ予選は、W杯とパリ五輪に向けた一歩目の大会となる。(ただし2023年W杯<日本・フィリピン・インドネシア共催>においては、日本とフィリピンは開催国枠が与えられている。インドネシアはアジアカップでベスト8以上がW杯出場の条件)