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森保ジャパンは、カタールW杯後の「リスタート」に欧州組は招集すべきか?

小宮良之スポーツライター・小説家
レアル・ソシエダで好調の久保建英(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

 森保ジャパンは、リスタートに欧州組は招集すべきか?

 今年3月、森保一監督が率いる日本代表は、24日にウルグアイ、29日にコロンビアと対戦する。カタールW杯後、初めての試合だけに重要性は低くはない。世界トップレベルの代表チームとのマッチメイクも簡単ではなかっただろう。全力で挑む向かうべきなのだが…。

 欧州各国リーグはシーズンもたけなわで、日本に全員を呼び戻すのは長旅を考慮すると、かなりリスクがあるのだ。

代表招集のリスク

 結論から言えば、森保監督は欧州の日本人選手の日程やコンディションを十分に考慮すべきである。

「Jリーグの選手だけで戦うべき」

 それは極端な意見で、大敗も考えられるだけに避けるべきだろう。

 ただ、欧州からわざわざ呼び戻してベンチに座らせるようならば、絶対に呼ぶべきではない。

 現状では、南回りで日本との往復になるだけに(ロシアのウクライナ侵攻で北周りが使えない)、いつもに増して長時間の移動になる。短期間で行ったりきたり、その都度、時差に適応しなければならない。日程的にも厳しく、リーグ戦のオフを疲労の回復に当てることができず、スランプやけがのきっかけになり得る。

 カタールW杯が11,12月に開催という変則的なシーズンで、出場選手の筋肉系トラブルが増えている。フランス代表キリアン・エムバペ、アルゼンチン代表リオネル・メッシが相次いで離脱(現在は復帰)。最近ではスペイン代表ペドリが大腿直筋のケガで全治1カ月の離脱だ。

 欧州組の代表選考は、10人程度に絞るべきではないか?

代表の継続性はまやかし

 誤解を恐れずに言えば、代表の親善試合はお祭りである。

 今回の代表戦が、何かに強く結びつくものではない。実際、森保監督がカタールで採用した戦いは、大会の最中に選手主導で編み出したものだった。4年間の積み上げ、というのはまやかしだろう。

 主力としてきた大迫勇也や原口元気は26人のメンバーからすら外れていた。中心と恃みにした柴崎岳は使いどころがなかった。発足1,2年目、エースは中島翔哉で…。

 繰り返すが、継続性が占める割合は代表活動では実状ほとんどない。カタールW杯で日本代表の主力になったのは、森保監督が冷遇していた欧州組だった。ちなみにロシアW杯も、大会直前に西野朗監督が指揮を執っている。

 南米の代表チームも、ホームの親善試合では自国リーグの選手の選出が増えるだけに。日本も欧州組招集にはデリケートになるべきだろう。「初陣だからこそベストチームを」と躍起になることはない。むしろ、国内組から発掘するような試みが必要だ。

「日本代表」の変化

 日本代表は10年前と違い、今や9割がたの選手を欧州組で構成できるようになった。欧州の日本人選手は、各国でプレーを重ねるだけで日本代表にも還元できている。彼らは日々、代表での活動よりも厳しい競争を繰り広げ、一人一人が日本代表として日本人の活路を開き、名声を高めているのだ。

 代表が、その妨げになってはならない。

 鎌田大地(フランクフルト)、久保建英(レアル・ソシエダ)、堂安律(フライブルク)、守田英正(スポルティング・リスボン)は、それぞれ再開した欧州カップ戦も戦うだけに、招集に関しては慎重になるべきだろう。もし主力として重んじるなら、それは一つの決断として悪くない。しかしコレクターのように呼び集めるだけなら、彼らのキャリアを潰すことになる。

 冨安健洋(アーセナル)のように、実力は十分だが、コンディションが100%とは言えない選手もいる。前述したように、W杯を戦ったツケは小さくない。無理をさせるべきではないだろう。

 三笘薫(ブライトン)のようにプレミアリーグで圧巻のプレーを見せ、ニュースの中心になっている選手は、代表でも人気にはなるだろう。選ばない、という選択はないかもしれない。しかし代表に呼ばれてモチベーションは上がり、本人も意気軒昂だろうが、肉体は確実に疲労を蓄積させる。わざわざ、日本まで呼んでウィングバック起用など噴飯ものである。

 一つ言えるのは、今や三笘の舞台は世界トップで、代表の親善試合以上に大事な試合を控えているということだ。

 とは言え、サイドバックとGK以外は、欧州組が大半を占めることになるだろう。お祭りに人気者は欠かせない。国内組の選手と比べると、あらゆる面で差があるのも事実だ。

 しかし繰り返すが、使わない、あるいは使う術が分からない選手を呼ぶべきではない。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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