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アジアカップ、オマーン戦は酷評されるべきだったか?

小宮良之スポーツライター・小説家
堂安律、南野拓実は卓抜したコンビネーションを見せた。(写真:松尾/アフロスポーツ)

ジャッジが味方に

 アジアカップ、日本は2連勝で決勝トーナメント進出を確定させた。

 しかし苦戦を余儀なくされたトルクメニスタン戦に続き、オマーン戦も局面を切り取ると、負けていてもおかしくはなかった。

 日本にとって虎の子の1点となったPKは、疑わしいジャッジだった。シュートのこぼれ球にペナルティエリアの外から猛然と突っ込んできた原口元気に対し、オマーンの選手が足を振っている。ただ、オマーンの選手はボールに接触しているし、身体への接触はあったとしてもかする程度。またエリア外に見えなくもなかった。

 この日、経験の浅い主審のジャッジは、不安定さを極めた。ナーバスになっていたのか。意味不明なイエローカードがあったかと思えば、ファウルがファウルと判定されない場面がいくつもあった。

 しかしPKに関して言えば、日本にアドバンテージが与えられていた。

 前半終了間際、日本はピンチを迎える。ペナルティエリア内で、長友佑都がシュートをブロック。これは手に当たっていた。シュートの軌道上で当たっており、PKの笛が吹かれるべきだったが、吹かれることはなかった。

 たら・れば、になるが、1-0の勝利は0-1の敗北になっていたとしても、不思議はない。勝負は拮抗。どう転んでもおかしくはなかった。

 結局、そのPKによる1点だけに終わって、森保JAPANに対する評価は厳しい。FIFAランキング下位の相手。理論上、”勝って当然”なのだ。

 では、日本のプレーはそこまで悪かったのか?

日本のプレーは酷評されるべきだったか

 まず、たら・れば、で語るのは、サッカーではあまり意味がない。もし、一つ目のPKがとってもらえず、二つ目のPKの笛が吹かれていたとしたら――。その後の日本はまったく違う戦いを選択していたはずだ。

 怒濤の攻めを見せ、オマーンをロープ際に追い込んでいただろう。のらりくらりと勝ちきるような戦いを選択していない。そもそも、後半のオマーンは疲労が目立ち、足が止まりつつあったが、対する日本の選手は戦う余力を残していた。

「格下相手には3-0,4-0で勝たないと、強豪には勝てない!」

 そうした意識が根強くある。しかし、格下に10-0で勝っても、強豪に勝てる保証にはならない。大切なのは、プレーの精度、強度である。

 その点、初戦よりも、森保JAPANの戦い方が改善されていた点は評価するべきだろう。

トルクメニスタン戦から改善

 トルクメニスタン戦、日本は格下相手に浮ついた調子で攻めかけてしまった。手数をかけすぎ、中盤や裏のスペースを明け渡し、悪戯にカウンターを浴びていた。守りが疎かだった。

 しかし、オマーン戦では攻守のバランスが向上。攻めているときも、守りの準備ができていた。ポジション取りが良くなったことで、結果的に攻撃も機能し、決定機を作れている。

 前半、南野拓実は鋭い裏への抜け出し、GKとの1対1など3回も決定機を迎えた。3回目は、遠藤航が奪い返したボールをすかさず縦にパスを入れ、それを持ち込んだ南野がシュート。これはブロックされたが、さらに堂安律がシュートし、今度は顔面でブロックされている。

 結局、PK以外にゴールは生まれなかったが、攻めてチャンスを作っていた。

ポジション的優位

 トルクメニスタン戦から代わって出場した遠藤は、キーマンの一人だった。中盤で相手の起点を潰すようなポジションを取り、奪ったボールはできるだけ速く縦に入れる。とは言っても、決して急いではない。ポジション的優位を得ることによって、チームの攻守を回していた。手数をかけなくても、前線には突き崩せるだけの選手がいるのだ。

 まだまだ改善の余地はあるものの、遠藤は長谷部誠に近い役割ができる。

 森保JAPANは、攻守でイニシアチブを握っていた。結果、堂安律、原口元気、南野拓実らが守備を崩し、コンビネーションを生み出せるようになった。得点はPKだけだったが、それにつながったシーンでは、原口、堂安、南野が連係で切り崩し、エリア内で決定機を作っている。縦への攻撃の鋭さは増していた。多くのチャンスを創り出し、相手に好きにやらせなかった。

 決定力不足の課題は残ったが、プレー内容そのものは酷評するほどではなかったはずだ。

格下と戦う難しさ

「セオリー上、格下と戦うのも、それはそれで難しい戦いになる」

 ジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)が語っているように、相手が弱いことを認めて挑んできた場合(守りを徹底して固めたり、研究され尽くされるなど)、苦戦は免れない。そして強い立場のチームは、心理的にどうしても”乾坤一擲の戦い”はできないのだ。

大会というのは「勝ち上がって、優勝する」のが、あくまで目標になる。その点、オマーン戦はスコアを考慮に入れ、老練な戦いをした、とも言える。後半も、動きが落ちた相手にほとんど何もさせていない。終盤に与えたCK、カウンターで南野が敵陣までボールを爆走して持ち上がってFKを得たシーンは、余力を残しながら戦っていたことの証左だろう。

 大会を勝ち抜くのは簡単ではない。チームは若手を多く登用する変革期にある。例えばオマーン戦に先発して不発だった北川航也も、コンビネーションを熟成することができたら、覚醒するだろう。北川はポジショニングに優れ、動きだしのタイミングも良く、ボールの置きどころも抜群だけに、アドバンテージを持ってプレーできる。なによりボールを叩く感覚に優れ、岡崎慎司に匹敵する才能を持っている。

 厳しい試合を乗り越え、その力はつくはずだ。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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