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低調ハイチ戦、杉本健勇がセンスを示すも・・・戦犯は選手か、ハリル監督か?

小宮良之スポーツライター・小説家
ハイチ戦、ゴールを祝う杉本健勇(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

「(日本代表監督就任以来28試合で)最悪の試合だった」

 3-3で終わったハイチ戦後、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はそう言って憤慨していた。

「失点後、選手たちはどうしてパニックになってしまったのか。守備はとにかくナイーブだった。何人かの選手は精神的な脆さを見せた。ワールドカップ本大会で世界の強豪と戦う準備を、選手たちができていない。もちろん、批判はこの私が甘んじて受ける。こんな試合を見せてしまって申し訳ない」

 コメントは論理的で、的を外れていない。選手たちのメンタルの脆弱さが浮き彫りになった。しかしそもそも、指揮官のマネジメントは適切だったのか?

 

前半20分で急停車したハリルJAPAN

  ハイチ戦の先発メンバーで、W杯予選を主力として戦ったのは、キャプテンマークを巻いた長友佑都だけだった。言い換えれば、10人を丸ごと替えた布陣に近い。新規に近いチームだ。

 にもかかわらず、前半20分までのプレーは完璧に近かった。1トップの杉本健勇が巧みなポストワークで人を使い、サイドに展開し、中で突き刺す。先制点はまさにその形だった。2点目も縦横にボールをつなぎ、エリアの近くで杉本がボールを持ちだし、倉田秋にラストパス。シュートのこぼれ球を杉本がバウンドでGKの頭上を抜いた。

 杉本を筆頭に、各選手がセンスの高さは示している。

  しかし、その後はちぐはぐさが露わになる。

 28分の失点は、まずセンターバックの寄せが甘く、長いボールをポストで落とされ、最後もマークのズレがあった。それからは脆弱なディフェンスが目立ち、反転からシュートを打たれるなど主導権を失う。そして後半に入って53分、左サイドで不用意に引っ張ってFKを与えてしまい、それをクイックリスタートされてマークが遅れ、中央に折り返される。人は足りていたが、下がったバックラインの前に入られ、撃ち抜かれた。そして78分には、やはり寄せが甘く、ミドルシュートを放り込まれることに。終盤に香川真司が決め、どうにか同点に持ち込んだが、ひどい試合運びだった。

「相手がブラジルなら10失点していたかも知れない」

 ハリルホジッチは語ったが、まさにそうした展開だった。少しプレッシャーを強められただけで、為す術がない。一方で守備の強度は低く、相手にしてやられた。バックラインの前のスペースは常にぽっかりと空いており、失点は必然だった。

  ピッチに立った選手たちは不甲斐なかった。

  では、なぜハリルJAPANは浮力を失ったのか?

なぜ4-3-3という布陣を選択したのか

  ハリルホジッチはハイチ戦、4-3-3というフォーメーションを選択している。中盤にアンカーを置いて、二人のインサイドハーフ。これは運用が難しいフォーメーションの一つである。なぜなら、中盤の人数が余ってしまったり、足りなくなってしまったりする。欧州で採用しているチームも、強烈にボールを握れるアンカー、ボールを運べるインサイドハーフを擁するバルサ、マンチェスター・シティ、ドルトムント、ナポリのようなチームだけ。他は使っていても、オプションである場合が多い。

  Jリーグでは、4-3-3を用いるチームはほぼ見かけない。実行する陣容を揃えるのが、困難だからだろう。プレッシャーをはがせる選手が揃っていれば、全軍で押し出せるが、一つでも詰まってしまうと守勢に立ち、アンカーの両脇のオープンスペースを狙われる。

  ハリルホジッチはシステムに馴染みのない選手で、4―3―3を採用した。それも10人が新参選手で。そもそもハリルJAPANで、4-3-3が機能した試合は一つもない。W杯予選でもUAE戦で使っているが、出来は散々だったのだ。

  ぶっつけ本番のハイチ戦で失格の烙印を押される選手たちは、たまったものではない。無論、適応力に問題はあった。とりわけ、2点取った後の気の緩みと1失点した後の怯み、焦り、恐れは目も当てられなかった。代表選手として、物足りなさを感じさせる選手は少なからずいた。

 しかしそれも含め、監督の目利きだろう。

  単純に、4-3-3をできる人材がいる、という判断ミスだった。例えばアンカーに入った遠藤航は所属クラブでセンターバックが主、ハードルが高すぎた。ほぼ全員を入れ替えるなら、せめて代表としてやり慣れた戦い方(4-2-3-1、もしくは4-2-1-3とも言える)にすべきだった。ベースアップを図るなら、主力に新参選手をブレンドするのが本筋だろう。あるいは、陣形としてオーソドックスな4-4-2を使っても良かった。

「23人を入れ替えても不思議ではない」

  ハリルホジッチは吐き捨てた。

  しかし、指揮官のゲームマネジメントも問われるべきだろう。

  不安だけが募った強化試合。11月の欧州遠征で修正はできるのだろうか。

 

 

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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