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欧州チャンピオンズリーグ、準々決勝の組み合わせが決定!頂点に立つクラブは?

小宮良之スポーツライター・小説家

欧州チャンピオンズリーグ、準々決勝の組み合わせが決定した。

アトレティコ・マドリー×レアル・マドリー。

パリ・サンジェルマン×FCバルセロナ。

FCポルト×バイエルン・ミュンヘン。

ユベントス×モナコ。

昨シーズンのファイナルと同じカードが、ここで生まれた。

ディフェンディングチャンピオンであるマドリーは、同市内のライバルであるアトレティコと対戦する。王者マドリーは異次元の戦力を誇る。ベンゼマ、ベイル、C・ロナウドと前線の選手の頭文字を取った「BBC」の得点力は、マットに沈みかけても相手を一発でKOできるパンチだろう。

昨年12月、世界王者を決めるクラブW杯ではアジア王者のウェスタン・シドニーを3-1と下したクルス・アスールを4-0と木っ端微塵。決勝では南米王者のサン・ロレンソを子供扱いし、2-0で頂点に立った。今年に入って故障離脱と主力選手の疲労蓄積で無敵の勢いはないが、最近になってセルヒオ・ラモス、モドリッチが復帰し、復調の兆しが見える。

しかし、マドリーはアトレティコとの対戦で非常に分が悪い。今シーズンはスペイン国王杯で敗退しただけでなく、リーグ戦でも勝てておらず、直近のアウエーゲームは4-0と大敗した。中盤を激しいプレスで制圧され、BBCへのボールを供給できなかった。

「最も対戦したくなかった相手」というのが、多くのマドリディスタの本音だろう。

アトレティコはシメオネ監督に率いられ、餓えたピラニアが血肉に群がるような猛烈なプレスと鋭いナイフのようなカウンターを武器とする。戦闘力の高さは特長と言えるが、CBゴディンは優れた読みと強さを持ち、MFアルダは天衣無縫な技術を出せるし、グリーズマンも走力と左足のフィニッシュで一瞬にして試合を決められる。古巣に戻ったトーレスもジョーカーになり得る。

決勝で再現されてもおかしくない対戦が組まれることになった。

FCバルセロナはチェルシーを破って意気軒昂のパリSGと対戦する。

パリSGはチアゴ・シウバ、ダビド・ルイスという世界最高クラスのセンターバックと「暴君」イブラヒモビッチという突出したFWを擁する。スター選手の寄せ集めではない。ブラン監督は4-3-3システムを浸透させ、インサイドハーフのマチュイディとヴェラッティと3トップとサイドバックが連係、いい距離感を保つことで有機的な連動を見せる。彼らが作り出すトライアングルはチェルシー守備陣を凌駕し、戦いの熟成を感じさせた。

しかしながら、バルサはメッシが超人的領域にいる。マンチェスター・シティ戦ではまるで歩いているように自然に股抜きを決め、わずかにテンポを変えるだけでスペースを生み、味方を走らせ、得点を生み出した。筆者は2年前に「メッシとC・ロナウドはどちらが最強か?」というルポで現地証言を集めたが、「同時代に生まれたC・ロナウドは気の毒だ」と言うほどの大差がついた。

「メッシがF1カーなら僕らはワゴンカー。追いつけないどころか、圧倒いう間にレースが終わる。彼に勝つには、自分たちがベストを尽くし、エンストを祈るしかない」

リーガで20年近くプレーしたベテランMF、プニャルをしてこう言わしめている。

そして今のメッシは中盤に下がって、プレーリズムを作り、チャンスメイクするなど万能で、もはや手が付けられない。

シャフタール・ドネツクを7-0で退けたバイエルンは、優勝候補筆頭とも言える。名将グアルディオラ監督に率いられるドイツ王者は戦術バリエーションが多く、相手に応じて戦い方を変えられる。アンカーに位置するシャビ・アロンソは将軍のようにチームを動かし、1試合最多パスは200本以上。恐るべき数字で、ポゼッションゲームを支える。

各選手の動きは変幻自在だ。左サイドバックのアラバが攻撃においてインサイドハーフのように機能するなど革新的。右サイドバックのラフィーニャはクラシックなウィンガーのように攻撃を横へと広げ、トップに位置するレベンドフスキーが縦に攻撃の深さを出す。そうして生み出したスペースに攻撃選手が殺到する。

そのバイエルンと対戦するFCポルトが伏兵であることは間違いない。個性的選手がカウンター攻撃スタイルの4-3-3システムに馴染んでいる。ジャクソン・マルティネスの決定力とテージョ、ブライミというサイドアタッカーのスピードと精度は脅威だろう。戦局によって投入できるクアレスマも切り札になり得る。オリベル・トーレスのプレーセンスは必見だし、十代のプレーメーカー、ネベスにもトップスターの予感がある。

しかし、現実は厳しい勝負になるだろう。

ユベントスはGKブッフォンを中心にしたイタリア伝統の守備力に、テベスという絶対的ゴールゲッターがいる。決勝トーナメントのドルトムント戦は苦しむ時間帯もあったが、相手の攻撃を凌ぎながらテベスがゴールを放り込んだ。イタリアの強豪に挑むモナコは戦術家の誉れ高いジャルディム監督の采配が当たっている。交代選手がいずれも得点に絡むなど、アーセナルを破った試合の再現ができれば---。

マドリーダービーが注目を集めることにはなる。しかし、どの試合も一級品のフットボールが見られるだろう。果たして、頂点に立つのは。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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