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怒るアマゾン「減らぬサクラレビューはFacebookのせい」

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米アマゾン・ドット・コムは電子商取引(EC)サイト上の不正カスタマーレビューを抑制するため、SNS(交流サイト)に積極的な協力を求めている。

アマゾン「SNSは十分に資源を投じるべき」

アマゾンは、人的パトロールと機械学習システムで不正レビューを削除している。だがそれでも消費者を欺く書き込みが後を絶たない。それはSNSというアマゾンの監視の目が届かないプラットフォーム上に、レビューの出品や、書き込みを売り込んだり、執筆者を募ったりするグループが数多く存在するからだという。

アマゾンは自社のブログでSNS企業の対応の遅さを非難している。

出所:米Amazon.com
出所:米Amazon.com

アマゾンによると、同社は2020年1〜3月、約300のグループがレビュー取引に関与しているとしてSNS企業に注意した。報告を受けたSNSがそれらのグループをサイトから削除するのにかかった日数は平均45日だった。

21年1〜3月には約1000のグループについて報告。削除するのにかかった日数は平均5日と、改善が見られた。アマゾンは一定の成果があったしSNSの努力を認めたものの、「SNSは我々が報告する前に発見・削除できるように十分に資源を投じるべきだ」と非難している。

英競争当局がフェイスブックに注意

同社は名指しすることは避けた。だが、ここのところ問題視されているフェイスブック上ではびこるサクラレビュー取引グループを懸念しているようだと米CNBCは報じている

英競争規制当局の競争・市場庁(CMA)は21年4月、フェイスブックがレビューを売買していた1万6000団体をSNS上から削除したと発表した

フェイスブックはシステムを改良し、こうしたコンテンツを自動で発見・削除する仕組みを導入した。新規投稿も禁止したほか、検索機能も改良し容易に探せないようにしたという。

フェイスブックや傘下の写真共有アプリ「インスタグラム」では製品やサービスのレビューを違法取引する行為が横行しており、CMAが事前に懸念を伝えていた。CMAは20年1月にも同様の指摘をしており、フェイスブックはこうした行為がサイト上に表示されないよう努めると約束した。

レビューの見返りに代金払い戻し

米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、好意的なレビューを書く見返りに、商品の代金を払い戻すという手口が一般的。払い戻しにはオンライン決済のペイパルが使われるという。具体的にはフェイスブック上に「アマゾンレビュー」といった名称のグループを作成し、書き手を募っている。

また、商品に35ドル(約3900円)のギフトカードを同梱し、金銭受け取りの条件としてレビューを書いたり、五つ星をつけたりすることを義務付けているものもあるという。

パンデミック以降のアマゾンの純利益は260億ドル(約2兆8600億円)に積み上がり、過去3年間の合計を上回った。プライム会員は5000万人増えて2億人超となった。こうしてアマゾンでの買物が増えるとともに、レビュー操作も増えていると同紙は報じている。

アマゾンによると、同社は20年に全体の約99%に当たる2億件以上の疑わしいレビューを掲載前に削除した。それらのアカウントが再び投稿できないようにする措置も講じ、関与した出品者アカウントを停止した。

(このコラムは「JBpress」2021年6月18日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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