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アップルがトム・ハンクス主演映画の配信権獲得、劇場公開難しく「AppleTV+」で配信へ

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
トム・ハンクス夫妻(写真:ロイター/アフロ)

 米CNBCによると、米アップルは、ソニーの米映画子会社、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)から新作映画の配信権を7000万ドル(約75億円)で取得したという。

トム・ハンクス脚本・主演の新作映画

 米人気俳優のトム・ハンクス氏が脚本と主演を務めた、第2次世界大戦時の米海軍の船が舞台の『グレイハウンド』という作品。

 アップルは同作品を15年間、自社の有料動画配信サービス「AppleTV+」で配信する権利を得たと、事情に詳しい関係者は話している。

 同作品は今年6月の劇場公開が予定されていたという。しかし、新型コロナウイルスの影響で映画館が閉鎖され、上映が困難な状況だった。

 ソニーは、動画配信大手の米ネットフリックスにも話を持ちかけたが、アップルがより高い金額を提示し、権利を得ることになったという。

 ソニーはアップルからの7000万ドルで制作費の5000万ドルを回収できるという。ただし、ソニーは中国での配信権を保持しており、ゆくゆくは同国で劇場上映する可能性があると、関係者は話している。

アップル、サービス事業に注力

 スマートフォンの普及に伴い、主力「iPhone」の販売がかつてほど伸びなくなった今、アップルはサービス事業に力を入れている。

 昨年9月末までの2019会計年度のサービス売上高は、全売上高(2601億ドル)の17.8%を占めた。また、昨年10〜12月期のサービスの売上高は前年同期比17%増の127億1500万ドルとなり、四半期として過去最高を更新。

 今年1〜3月期の決算では、サービスの売上高が133億4800万ドルとなり、引き続き四半期の過去最高を更新。全売上高の約23%を占めた。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で「巣ごもり消費」が急増している。前述したネットフリックスの今年1〜3月期の売上高は、前年同期比28%増の57億6800万ドル。純利益は同約2.1倍の7億900万ドルとなり、過去最高を更新した。

コンテンツ獲得に巨額投じる

 アップルは昨年11月、定額制動画配信サービス「Apple TV+」を世界の100以上の国・地域で開始した。料金は月額4.99ドル(日本では600円)。iPhoneなどの同社製機器を購入した顧客には1年間の無料視聴特典を付けている。

 こうした中、同社はコンテンツの制作・獲得に巨額を投じていると伝えられている。昨年8月には、オリジナルのテレビ番組や映画の制作に60億ドル(約6400億円)超を投じたと、英フィナンシャル・タイムズが伝えた。

 また、昨年12月、米ウォールストリート・ジャーナルは、アップルがスパイ映画「007」シリーズなどを手がける米MGMホールディングスや、米大学スポーツリーグのパシフィック12カンファレンス(Pac-12)と交渉したと報じた。

 米ブルームバーグによると、アップルは旧作の映画やテレビ番組の配信権も狙っており、ハリウッドの映画会社と交渉中だという。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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