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フェイスブック、新型コロナで窮地の地方紙支援で1億ドル

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 米フェイスブック先ごろ、新型コロナウイルスの感染拡大により経済的損失を受けたメディア企業を支援するため、1億ドル(約107億円)を拠出すると明らかにした

地場企業の広告に依存する地方紙

 ロックダウン(都市封鎖)に伴い、飲食店や小売店が広告予算を削っている。こうした中、地場企業の広告に大きく依存している地方紙などのメディアが今、窮地に陥っている。

 フェイスブックは2500万ドルを緊急支援金として米国の地方メディアに拠出し、7500万ドルを広告掲出料として世界のメディア企業に支出するという。

 新型コロナの世界的大流行で読者数が急増し、記事に対する需要が高まっているものの、広告収入の減少に直面している地方メディアは大きな経済的打撃を受けているとしている。

 同社はかねて、地方メディアを支援する取り組みを明らかにしていた。今年3月17日には、新型コロナウイルスについて報道する米国とカナダのメディアに計100万ドル(約1億700万円)を拠出すると表明した

 サウスカロライナ州の地方紙はこの資金で、新型コロナの有料記事を無償化したり、出張費を賄ったり、テレワーク機器を拡充したりした。また、テキサス州のオンラインニュースメディアは、フリーランスのライターや翻訳者を雇い、対象読者層を広げたという。

メディア企業とフェイスブックの関係

 一方、メディア企業とフェイスブックや米グーグルなどのオンラインプラットフォーム企業は複雑な関係にあると、米ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

 フェイスブックなどのプラットフォーム大手は、メディア企業のサイトに膨大な数の読者をもたらすありがたい存在だ。記事の一部を掲載することで、そのリンクから自社サイトに読者がやって来る。

 しかし、ネット広告分野では、フェイスブックとグーグルの2社が市場シェアの6割以上を占めている。こうした中、メディア企業はフェイスブックなどに対し、記事のライセンス料を支払うべきだと主張している。

年間数千万〜数億円のライセンス料

 フェイスブックは不満に対処するため、昨年(2019年)10月、米国で「フェイスブック・ニュース」と呼ぶニュース配信の試験サービスを始めた。

 スマートフォン向けアプリの中にニュース専用タブを設置。ジャーナリストなどで構成する専門の編集チームが選んだニュースなどを配信するというものだ。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、これに米メディア大手ニューズ・コーポレーションが参加した。同社傘下の米ダウ・ジョーンズのウォールストリート・ジャーナルやバロンズ、マーケットウォッチ、同じくニューズ・コーポレーション傘下のニューヨーク・ポストがフェイスブックでニュースを配信しているという。

 このほか、ワシントン・ポストやUSAトゥデイを持つガネット、ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズ 、コンデナスト、NBCニュース、ABCニュース、ブルームバーグ・メディア、バズフィード、ビジネスインサイダーなども参加したと伝えられている。

 フェイスブックがメディア企業に支払うライセンス料は年間数十万〜数百万ドル(数千万〜数億円)。大きなメディアへは、それ以上を支払うとウォールストリート・ジャーナルは報じている。また、同紙は別の記事で、グーグルもライセンス料の支払いに関し、メディア企業と協議を始めたと伝えている。

  • (このコラムは「JBpress」2020年4月1日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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