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当局ついに動く、便乗値上げ対策をアマゾンやFBなどに要請

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:アフロ)

 米CNBCによると、ペンシルベニア州など全米33の州・地域の司法長官が米アマゾン・ドット・コムや米フェイスブック(FB)、米イーベイなどのオンライン・マーケットプレイス運営企業に対し、新型コロナウイルス関連の便乗値上げ対策を強化するよう要請した。

「モグラたたきではなく、先を見越した対策を」

 ペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ司法長官のほか、カリフォルニア州やコロラド州、ワシントンDCなどの司法長官が各社宛の書簡で「あらゆる手段を使って便乗値上げを即刻やめさせなければならない。あなた方は困難な状況にある市民を救う倫理的義務がある」と指摘したという。

 司法長官らは、アマゾンなどがすでに一定の措置を講じていることを認識している。しかし、すでに消費者が被害に遭っていると指摘。モグラたたきのような対症療法的な方法ではなく、先を見越した対策をとるようにと強く要請した。

 司法長官らは消費者団体「米国公共利益調査グループ(US Public Interest Research Group、PIRG)」の報告やメディアで報道された事例を示している。

 例えばアマゾンのサイトでは、マスクや消毒ジェルの価格が、世界保健機関(WHO)が1月30日に緊急事態宣言を出す前と比べて5割以上高いという。米クレイグスリストでは消毒ジェルの2リットルボトルの価格が250ドルと、10倍以上だという。

 司法長官らは、こうした価格つり上げ行為を防止する厳格な規定を設けるよう要請。消費者が規定違反を報告できる仕組みも用意するよう求めている。

米上院議員、アマゾンCEOを非難

 これに先立ち、米民主党のエドワード・マーキー上院議員がアマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)に質問書を送っている。上院議員はアマゾンの対策が不十分だとして厳しく非難。便乗値上げの判断基準、出品者への警告と商品の削除状況、新たな対策を回答するよう同社に求めた。

 アマゾンはこれに回答し、規約違反の商品53万点を削除し、2500件の出品者アカウントを一時停止したと明らかにした。

 また、同社の公共政策担当副社長は「マーケットプレイスの監視を強化し、出品者には規約順守を徹底させる」とし、悪質出品者の訴追を視野に入れて、各州の司法長官と協議していると説明していた。

アマゾンとFB、マスクなど衛生用品の出品と広告を禁止

 CNBCによるとアマゾンはその後、価格つり上げ防止に向けた取り組みの一環として、マスクや消毒ジェル、除菌シート、除菌スプレーなどの新規出品の受け付けを中止した。米イーベイも同様の措置をとったという。

 フェイスブックもSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やマーケットプレイスでこれらの衛生用品やウイルス検査キットなどの広告と出品を禁止した。広報担当者は「新型コロナウイルス感染拡大の危機を悪用し、金銭的利益を得ようとする行為を阻止する」と述べている。

  • (このコラムは「JBpress」2020年3月27日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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