ウーバーを脅かすカリフォルニアの画期的新法 ドライバーも配達員も「請負」から「従業員」へ

(写真:ロイター/アフロ)

 米カリフォルニア州の議会で今年9月10日、画期的な法案が可決した。米ウーバーテクノロジーズなどの配車サービス、いわゆるギグエコノミー(Gig Economy)で働くドライバーなどの人たちをこれまでの「請負業者」ではなく「従業員」として扱うよう義務付けるものだ。

 カリフォルニアでは、請負業者と従業員の定義をどこよりも明確なものにするようだ。例えば、企業が仕事の実績を管理・統制したり、仕事の内容が企業の通常業務の範疇に入ったりする場合は「従業員」になるという。

 今後は、配車サービスのほか、「ウーバーイーツ」などのレストラン料理の配達、ビル管理・清掃、ネイルサロン、建設作業などの仕事に関わる人、そしてフランチャイズ店のオーナーでさえも従業員に分類される可能性があると米ニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。

福利厚生や最低賃金のないギグ・ワーカー

 ギグエコノミーの企業で働く人たちは、社員にはある福利厚生や最低賃金制度などがない。有給休暇もなく、社会保障や医療保険の会社負担もない。

 カリフォルニア州のマリア・エレナ・デュラーゾ上院議員は、次のように述べている。

 「ギグエコノミー企業は自らを、未来を作る革新的企業と呼ぶが、それは彼らが被雇用者の社会保障費を支払わないという未来だ。不当な低賃金には革新的なものは何もない」

「働き方の自由」と「報酬・福利厚生」の両立

 一方で、ウーバーなどは、請負制によって柔軟な働き方が可能になると主張している。

 同業の米リフトは「報酬や福利厚生も重要、自由な働き方も重要で、大多数のドライバーは、これらが両立する思慮深い解決策を望んでいた。しかし議員らは、こうしたドライバーの意見を支持する機会を逃した」と反論した(図1)。

 ウーバーとリフトはかねてドライバーらを従業員として扱えば、事業が成り立たなくなるとも述べていたという。

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企業のコストは2~3割上昇

 ニューヨーク・タイムズは、この法律が施行されれば、カリフォルニア州だけで100万人以上の請負業者が従業員になると伝えている。ウーバーとリフトには同州に数十万人のドライバーがおり、彼らの雇用形態も変わることになる。ギグエコノミー企業のコストは今後20~30%上昇するとみる業界関係者もいるという。

 また、このカリフォルニア州の動きが他の州にも波及する可能性がある。ニューヨーク州では労働者の団体が同様の法律の制定を求めて運動している。ワシントン州とオレゴン州では法案が不成立となったが、カリフォルニアの事例を受けて新たな動きが起きる可能性もあるという。

ウーバーは経営体制刷新、リストラでコスト削減

 こうした中、ウーバーは役職を廃止したり、部門を統廃合したり、人員を削減したりして経営体制の刷新を図っている最中だ。今年6月には、COO(最高執行責任者)職を廃止したほか、「マーケティング」や「広報」「ポリシー(政策担当)」部門を統合した。これに伴い最高マーケティング責任者(CMO)が辞任した。

 7月にはマーケティング部門で約400人を削減した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙CNBCなどの米メディアは、ウーバーが9月に435人の技術職員をレイオフし、10月には配車・料理宅配サービスをはじめ、マーケティングや顧客サポート、自動運転開発などの部門で合計約350人を削減したと報じた。

 ダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は社員あての電子メールで、「再びこのような措置を取ることがないように、幹部と私はできることを何でもやるつもりだ」と述べたという。

 カリフォルニア州の法案は、「AB5」と呼ばれる労働法に関する改正案。ギャビン・ニューサム知事が9月18日に署名し、法が成立。来年1月1日に施行される。知事は署名文書で、労働者を保護しない誤った分類が是正されるとコメントした。

  • (このコラムは「JBpress」2019年9月12日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)