アマゾンも失敗する ついに米英でフードデリバリーを終了
米アマゾン・ドット・コムは米国で展開していたフードデリバリーサービスを6月で終了した。この市場は競争が激化しており、十分なシェアを得ることができなかった。
新興企業がひしめく市場
同社が「Amazon Restaurants」と呼ぶレストラン料理の宅配サービスを始めたのは2015年のこと。当初のサービス対象地域は、本社がある米ワシントン州シアトルだったが、その後、ロサンゼルスやシカゴ、サンフランシスコ、マンハッタンなどと対象地域を拡大し、英国ロンドンでも同様のサービスを始めた。
これは有料プログラム「プライム」の会員向けサービス。スマートフォン用アプリなどでメニューを選んで注文すると、アマゾンの配送ドライバーが店で料理を受け取って顧客宅に配達する。所要時間は1時間以内で、料理にはサービス料を加えた特別価格などを設定せず、すべての注文の配達料は期間限定で無料にする、というものだった。
しかし、そのころから買い物代行サービスの米ポストメイツや米ドアダッシュなどの新興企業が同様のサービスを展開。配車サービス大手の米ウーバーテクノロジーズも2016年に「ウーバーイーツ(Uber Eats)」の本格展開を開始し、競争が激化した。
ウォール・ストリート・ジャーナルによるとフードデリバリーは労働集約型のビジネスで採算性が悪い。ただ、新興企業には強みがあった。著名投資家から調達した巨額の資金を使ってサービス地域を増やし、シェアを伸ばしていった。
例えば、ウーバーイーツは米国の300地域でサービスを展開。これに対しアマゾンは約20都市にとどまっていた。ウーバーイーツの今年1〜3月期の売上高は5億3600万ドル(約580億円)で、1年前から89%増加した。
こうした中、アマゾンは昨年12月、この分野で英国市場から撤退した。ウーバーイーツの英国事業など、同国競合との競争に直面し、思うように事業を拡大できなかったという。
eコマースの巨人が過去に失敗した事業
ウォール・ストリート・ジャーナルは、eコマースの巨人であるアマゾンが、小売り事業で失敗するのは珍しいことだと伝えている。
同社は過去に、自社ブランドのスマートフォン「Fire Phone」を市場投入したが、大失敗した。飲食店・小売店のサービスを安価に提供するクーポン販売事業「Amazon Local」や宿泊施設予約サービス事業「Amazon Destinations」からも撤退した。
新分野への投資
一方で、アマゾンは新たな分野への投資を続けている。傘下の高級スーパーマーケットチェーン「ホールフーズ・マーケット」の商品をプライム会員に即時配達するサービスを全米展開している。
5月には、英国のフードデリバリー企業「デリバルー(Deliveroo)」が実施した5億7500万ドル(約620億円)の資金調達を主導した。
- (このコラムは「JBpress」2019年6月13日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)