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止まらぬアマゾン人気、米Prime会員がまもなく1億人

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
Jeff Bezos and MacKenzie Bezos(写真:Shutterstock/アフロ)

 アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は今年4月、株主に宛てた書簡で、同社の有料プログラム「Prime(プライム)」の世界会員数が、1億人を超えたことを明らかにした。

 しかし、米国の市場調査会社CIRPが先ごろまとめたレポート(PDF書類)によると、米国におけるPrime会員は今年7〜9月時点で9700万人となり、会員数は同国だけで1億人に到達しそうだ。

会員数の伸びが8%に低下

 これは、アマゾンの米国顧客の61%がPrime会員になったことを意味するという。アマゾンがPrimeを米国で始めたのは2005年2月。それ以降、会員数は右肩上がりで伸び続けてきた。ただ、その伸び率は数年前に比べて鈍化していると、CIRPは指摘している(図1)。

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 CIRPが1年前に公表したレポートによると、米国のPrime会員は2017年7〜9月時点で、9000万人。このときの前年同期比伸び率は38%だった。

 また今年7月のレポートを見ると、今年4〜6月時点の同伸び率は12%だ。これが、この7〜9月は8%に低下した。

 米国顧客の6割をPrimeに加入させることに成功したアマゾンだが、今後の展開は厳しいものになるのかもしれない。

Prime会員の支出額が増加

 一方でアマゾンには、明るいニュースもある。Prime会員の買い物金額が増え続けているのだ。

 CIRPによると、1人のPrime会員が1年間にアマゾンで買い物をする金額は平均1400ドルで、非Prime会員(600ドル)の2.3倍。

 CIRPが1年前に行った調査では、Prime会員が1300ドル、非Prime会員が700ドルだった。つまりPrime会員はアマゾンでより多くの金額を支出するようになっており、非Prime会員との支出額の差が大きくなっている。

 CIRPによると、Prime会員は、加入期間が長い人ほどアマゾンで多くを支出する。例えば加入期間が3年以上の人の年間支出額は1500ドルで、3カ月未満の人の900ドルを大きく上回っている。

 このほか、会員は1年間にアマゾンで平均26回買い物をするが、非会員は14回。会員は1回の買い物で平均55ドルを使うが、非会員は42ドルにとどまるという。

会費値上げ戦略は成功か

 アマゾンは今年5月、米国におけるPrimeの料金を約2割引き上げ、年会費を119ドルにした。しかし、こうしてCIRPのレポートを見ると、伸びは鈍化したものの会員は今も増え続けている。これまでのところ値上げ戦略は成功していると言えそうだ。

 アマゾンでは今年4〜6月期、Prime会費をはじめ、ストリーミングミュージック/ビデオ、電子書籍、オーディオブックなどのサービス料金から成る「サブスクリプション・サービス」の売上高が、1年前から57%増加した。

 同社は、昨年買収した高級スーパーマーケット「ホールフーズ・マーケット」の商品を会員に即時配達するサービスを始めるなど、特典を増やし続ける戦略で顧客の囲い込みを図っている。

  • (このコラムは「JBpress」2018年10月19日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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