Yahoo!ニュース

ソーシャルメディアはピークに達したか? 利用者数の伸びが軒並み停滞

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 ソーシャルメディア大手はここ最近、利用者数の伸び悩みで苦戦状態が続いているようだ。

スナップとツイッターの利用者が減少、FBも欧州で減少

 例えば、フォトメッセージングサービス「スナップチャット」を運営する米スナップは、1日当たりの利用者数が1億8800万人となり、3カ月前の1億9100万人から減少した。

 米フェイスブックも欧州における、1日当たりと1カ月当たりの利用者数がともに減り、北米の利用者数が横ばいになったことを明らかにした。

 米ツイッターは、1カ月当たりの世界利用者数が100万人減少した。

 フェイスブックとツイッターはともに利用者減少の理由として、欧州で5月に施行された「GDPR(一般データ保護規則)」の影響を挙げた。ツイッターは、偽アカウントなどの不正利用対策の影響もあったと説明している。

 これらは、今年4〜6月期の業績データである。まもなく発表される7〜9月期決算で、その後のデータが開示されることになっている。しかし、こうした各社の突如とした伸び悩みは何を意味するのだろうか。

 「ソーシャルメディアには、もはや新規利用者が入る余地はなく、その成長はピークに達したのかもしれない」と米CNBCは伝えている。

フェイスブック、傘下のサービスが好調

 ただ、こうした状況にあってもフェイスブックは、この市場で有利な立場にあるとCNBCは指摘している。

 例えば、フェイスブックが傘下に持つ写真共有サービス「インスタグラム」は今年6月、1カ月当たりの利用者数(月間アクティブアカウント数、1カ月に1度以上サービスを利用するアカウント数)が10億に達した。

 フェイスブックがインスタグラムを買収した当時、この数は4000万だった。その後インスタグラムの利用者数は一貫して右肩上がりで推移し、ついに10億の大台に達した(図1)。

画像

 フェイスブックは、傘下のメッセージアプリ「ワッツアップ」も好調だ。

 マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は今年1月、ワッツアップの1カ月当たりの利用者数が15億人を超えたと発表した。

 これらフェイスブックのサービスは、いずれも利用者数が他社サービスを大きく上回っている(図2)。

画像

FB、新興国市場に向けた施策

 そうした中、フェイスブックは、新興国市場に向けた取り組みも進めている。同社のサービスは中国で遮断されており、同国に住む膨大な数の利用者を取り込めないからだ。

 フェイスブックは2015年に、インドやインドネシアなど、高速なインターネット接続環境のない新興国向け軽量版モバイルアプリ「Facebook Lite」を公開した。先ごろは、インスタグラムにも軽量版を導入している。

 こうした施策が奏功したようでフェイスブックの利用者は、北米や欧州以外の地域で順調に伸び続けている。

 ただ一方で、同社は、アジア太平洋地域などで利用者1人当たりの売上高が低いというジレンマも抱えている。

 例えば今年4〜6月期の北米における利用者1人当たりの売上高は25.91ドル。アジア太平洋地域では、わずか2.62ドルにとどまっている(図3)。

画像
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

小久保重信の最近の記事