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アップル惨敗、AIアシスタントでAmazonとGoogleに勝てない理由

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
企業発表イベントでGoogle Homeを持ってポーズする後藤真希さん(写真:アフロ)

 米国の市場調査会社CIRP(コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ)がこのほど公表した最新レポート(PDF書類)によると、米国のスマートスピーカー利用台数は、今年6月末時点で5000万台に達した。

アップルのシェアはわずか6%

 メーカー別の利用台数シェアは、米アマゾン・ドットコムの「Echo」シリーズが70%

 米グーグルの「Google Home」シリーズが24%

 そして米アップルの「HomePod」は、わずか6%だった。

 こうしてアップル製品のシェアが低いのには、主に2つの理由があるとCIRPは指摘している。1つは、市場参入の遅れだ。

 アマゾンがEchoの初代機を発売したのは、2014年11月。当初は米国の一部のPrime会員を対象にした限定販売だったが、その翌年には一般販売を開始し、その後Echoは大ヒットとなった。

 これを追う形でグーグルがGoogle Homeを発売したのは2016年11月。アマゾンのEchoから2年遅れだ。

 そして、アップルがHomePodを発売したのは、今年2月(日本では未発売)。アップルは、さらに1年超遅れた。

カギを握るのは価格競争力

 こうした製品投入時期の違いに加え、EchoとGoogle Homeには、価格が50ドルと安価な製品が用意されている。「Echo Dot」と「Google Home Mini」である。

 これに対し、HomePodは価格が349ドルの1モデルのみ。これが2つ目の理由という。

 アマゾンとグーグルはいずれも、顧客宅のすべての部屋に自社のスマートスピーカーを置いてもらうという考えのもと、マーケティング戦略を展開しており、それらが奏功しているという。

 例えば、アマゾンの利用者の34%は、2台以上のEchoを所有している。Google Homeの利用者では、この数が31%。また、アマゾンの場合、3台以上所有しているという人が10%いる。

 こうして多くの利用者が複数台のスマートスピーカーを所有しているのは、前述したとおり、50ドル程度と安価な製品が用意されているからだ。

 CIRPによると、アマゾンとグーグルのスマートスピーカーは、その販売台数の半数以上が安価モデル。2社はこうして、自社プラットフォームを家庭内で広めようとしている。

 アップルのHomePodも発売以降、わずかながらシェアを伸ばしている。しかし、価格競争力の高い製品を持たないアップルが、今後この市場でシェアを拡大していけるのかどうかは、分からないとCIRPは指摘している。

さらにあったかアップルの弱み

 アップルには、AI(人工知能)アシスタントの精度向上という課題もあるのかもしれない。

 インターネットと音声操作に関する話題を伝えるニュースサイト、米ボイスボットによると、アップルのアシスタントサービス「Siri」は米国スマートフォンユーザーの間で最も多く利用されている(図1)。

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 しかし、米ネットマーケティング会社ストーンテンプルが行った大手4社のアシスタントサービスを対象にした調査では、一般的な質問に対する正答率はSiriが最も低い(図2

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 これによると、Siriは、質問に対する回答の比率が40.8%。そのうち正しい答えの比率は80%。これに対し、Google Assistant(スマートフォン版)は回答率が77.2%で、そのうちの95.2%が正しい答えだったという。

(このコラムは「JBpress」2018年8月8日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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