「銃殺されたいのか?」中国公安の脅迫に震える北朝鮮女性たち
「捕まって銃殺されたいのか」。そんな脅迫電話に、北朝鮮出身の女性たちが震え上がっている。
場所は中国東北地方の最大都市、瀋陽だ。中国のデイリーNK情報筋によると、瀋陽市公安局の一部が先月中旬から、地元在住の脱北者に対して、文字通り脅迫電話をかけている。以下は、ある脱北女性が公安から電話越しに言われた言葉だ。
「韓国に行くつもりなら絶対にやめろ。静かに家で暮らしていれば捕まることも北朝鮮に送り返されることもないが、韓国に行こうとして捕まれば北朝鮮に送り返す。お前のことを思って言ってやってるのだから、聞き流さずに心に刻め。さもなくば取り返しのつかないことになる」
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
また、別の脱北女性に対しては、露骨な言葉を使って脅迫した。
「韓国に行こうとして捕まれば無条件で北朝鮮送りだ。そうなれば銃殺だ。韓国に行こうと考えずおとなしく暮らせ」
さらに、韓国行きを試みて逮捕された前歴を持つ脱北女性に対しては、さらに強い口調で脅迫したという。
「前回は運良く釈放されたが、そんな幸運は二度とない。北朝鮮に送り返されれば銃殺だ。外出もせず、韓国に行こうなどと夢にも思うな」
中国東北地方の公安当局は、中国人男性と結婚して暮らしている脱北女性に対して、地元の公安局への登録を誘導し、居住を認めるという非公式なやり方を取っている。
脱北者にとって「銃殺」というのは最も恐ろしい言葉だ。公民証(中国政府発行の身分証明書)がないため自由に出歩けず、著しい心的ストレスに常に晒されている脱北女性たちは、公安の脅迫電話に震え上がっている。
一連の脅迫電話の噂は、中国に住む脱北者の間に広がり、「もしかしたら北朝鮮に送り返されるのではないか」という恐怖が高まっている。ある脱北女性は「どうやって生きていけばいいのかわからない」と、不安な気持ちを吐露したという。恐怖のあまり、計画していた韓国行きを取りやめる脱北者も出ているとのことだ。
中国の外交官は先月15日、スイス・ジュネーブの国連本部で行われた国連人権理事会の付属の会議で、脱北者について「経済的に理由で違法に入国した北朝鮮出身者は難民ではない」「したがって(難民を強制送還してはならないという)ノン・ルフールマン原則は適用されない」と述べた。
また、「北朝鮮で拷問または大規模な人権侵害が行われているという証拠はない」「ノン・ルフールマン原則適用の構成要件が満たされていない」と、上述の公安の発言とは相反する主張を展開した。
これに対しては米国務省が反論するなど、中国の脱北者の処遇について、国際社会の批判が高まっている。公式には強制送還、非公式には居住を認めるというダブルスタンダードが、国際社会からの批判を意識した結果かどうかはわからない。それでも、まったく関係ないとも言い切れない。