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北朝鮮の男女5人「秘密の地下教会」で公開処刑

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の公開裁判(デイリーNK)

北朝鮮の首都・平壌はかつて「東洋のエルサレム」と呼ばれていた。1907年1月に「平安南道<ピョンアンナムド>冬季男性査経会」という、聖書を学ぶ集まりが2週間に渡って開かれたのだが、徐々に興奮が高まり、通声祈祷(トランス状態に陥って祈りの言葉を叫びつつけること)や懺悔も相次いだ。それも横領、殺人、強姦など、墓場まで持っていくべき自分の犯罪行為を、何百人もの民衆の前で告白し、許しを請うた。

このことは全国に広がり、プロテスタント信者が急速に増えた。この出来事は「平壌大復興」と呼ばれ、朝鮮半島にキリスト教が広がり、定着する大きなきっかけとなった。背景には、日本に併呑されつつあった当時の朝鮮の不安感があったものと見られる。

ところが、日本からの植民地支配から解放された後の1945年、北朝鮮のトップの座についた金日成は、自らがクリスチャンの家の出であるにもかかわらず、キリスト教の弾圧を開始し、処刑や投獄が相次いだ。これは、クリスチャンには貧農よりも富農が多かったことと関係していると言われている。

家族ら50人も

多くのクリスチャンは、信仰の自由が認められている韓国へと逃れた。朝鮮戦争を経て、韓国はクリスチャンにとって信仰の砦であると考えられるようになり、ナショナリズムと結びついた韓国型のキリスト教が誕生した。

北朝鮮からキリスト教は完全に消滅したように見えるが、数はわからないものの、「地下教会」が存在する。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は昨年5月、現地の情報筋からの情報として、平安南道(ピョンアンナムド)順川(スンチョン)市の東巌里(トンアムリ)で、午前5時ごろに集まって聖書を読んでいた5人の男女が保衛部(秘密警察)に踏み込まれて現行犯逮捕されたと報じた。家宅捜索の結果、数十冊の聖書に関する冊子が押収された。

(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面

この村には、日本の植民地時代に大小の教会8か所と、長老派系の義英學校が存在するなど信仰心の篤い地域として知られていた。1997年、2005年にも同様の弾圧が起きている。

ところで、件の5人はどうなったのだろうか。

RFAは後追い報道をしていないが、韓国政府が発表した「2023北朝鮮人権報告書」で紹介された事例を見ると、概ね見当がつく。

事例1
2019年に平壌市で秘密裏に教会を運営していた団体が摘発され、5人が公開処刑され、7人は管理所(政治犯収容所)に送られ、30人は労働教化刑(長期の懲役刑)を受け、家族を含む関係者50人が強制追放された。

まさに地下教会に関する事例だ。他の地方でも重大事案として取り上げられるキリスト教だが、首都の平壌で起きた事件ということで、非常に厳しい処分が下されたようだ。

事例2
2018年に平安南道平城(ピョンソン)市で18人に対する公開裁判が行われ、うち1人は聖書を所持してキリスト教を伝えた容疑で死刑を宣告された。裁判後、すぐに公開銃殺された。

平城は、平壌の北東に隣接する流通の中心地で、北朝鮮各地から人や物が集まる。ここで宣教が行われていたとすると、他の地方に広がっていてもおかしくはない。

事例3
2017年に咸鏡北道(ハムギョンブクト)で村人12人が、宣教を行っていたとして保衛部に拘束された。陳述によると、韓国のキリスト教団体から送られてきた「黒いカネ」を受け取り、キリスト教の根拠地を作り、村人に宣教をしていた。2人が管理所(政治犯収容所)に送られ、10人は労働教化刑(長期の懲役刑)と労働鍛錬刑(短期の懲役刑)を宣告された。

10人に関しては、キリスト教についてよく知らず、主犯の2人から教えられただけだとして、比較的軽い罪で済まされたようだ。

事例4
2019年に619連合指揮部が実施した迷信行為の取り締まりで50人ほどが逮捕され、平壌市にあるホテルの前で公開裁判が行われた。死んだ人も復活できると人々を惑わしたインチキ宗教の教祖、聖書を所持していた人はそれぞれ死刑判決を受けた。

韓国政府は近々、2024年版の北朝鮮人権白書を発表するものと思われる。コロナ禍でより悪化したと言われる北朝鮮の人権状況だが、どのような内容が収録されるか注目される。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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