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警察官が国民をカツアゲする北朝鮮の「年末恒例行事」

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

 年末の防犯活動が盛んなのは日本も北朝鮮も同じだが、ひとつ違うところがある。警察官がカツアゲ(恐喝)を取り締まるのではなく、警察官自身がカツアゲに必死になっているところだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

 咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムン)の情報筋によると、安全部(警察署)が各種犯罪や非社会主義行為(社会主義にそぐわない風紀の乱れ)と取り締まるという名目で夜間パトロールを実施している。夜10時が過ぎると、市内でパトロールをする安全員(警察官)が目につくようになるが、彼らは取り締まりを口実に、何の罪もない市民に難癖をつけ、金品を奪い取っている。

 一例を挙げると、通行人を片っ端から呼び止めて身分証明書を確認、ポケットになにか入っていないか確認したり、若者の場合は行き先をしつこく聞いたりする。情報筋は、体調を崩した両親の看病に行き、夜12時を過ぎて帰路についた友人からこんな話を聞かされた。

 安全員に呼び止められポケットと携帯電話の中身を見せるよう要求されたが、公民証(身分証明書)を持っていなかったという理由で寒空の下で1時間以上立たされ、安全員2人にタバコを1箱ずつ渡してようやく解放されたという。

 徳山洞(トクサンドン)在住のある人は、自宅のビデオで外国映画を見ていると、急に糾察隊(取り締まり班)ぶ踏み込まれた。国営会社が販売している木蘭ビデオではなくコピーされたものだとして、どこで買ったのか言えと厳しく追求されたので、6万北朝鮮ウォン(約1020円)を払って事を納めたとのことだ。

(参考記事:手錠をはめた女性の口にボロ布を詰め…金正恩「拷問部隊」の鬼畜行為

 中国国境に接する咸鏡北道(ハムギョンブクト)穏城(オンソン)の情報筋も、現地で夜間パトロールが強化されているとして、その実情を伝えた。

 安全員は深夜になって家々を回り、明かりがついている家の玄関ドアをノックして、何をしていたのか詰問する。遠く離れた吉州(キルチュ)から来た人は、列車がなくなったため、滞在期限を1日オーバーして知人宅に泊めてもらっていたが、そこにやってきた安全員からあれこれ言われ、結局は8万北朝鮮ウォン(約1360円)を払われたとのことだ。

 一方、商店を営む家にやってきた安全員は、「こんな夜遅くに何をしているのか」「営業許可証をチェックする」と言い出したが、オーナーの猛抗議を受けて引き下がらざるを得なかったという。

上述の吉州からやってきた人とは異なり、地元民で且つ商売をしているということは、地方当局の幹部とつながりを持っている可能性があるので、安全員もさほど強く出られなかったのだろう。

 夜間パトロールを利用した安全員のカツアゲが急増し、市民は怨嗟の声を上げているが、当局は聞く耳を持たないという。

 この時期に安全員がカツアゲに必死になるのは、年末の総和(総括)を控えているからだ。今年1年の摘発実績を評価されるのだが、点数を稼ぐと同時に、堂々とカネも稼げるとあって、市民をいびり倒すのだ。もはや『年末の恒例行事」と言っても過言ではないだろう。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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