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“拷問室へ向かう男”の衝撃写真…北朝鮮国民も「ありえない」驚愕

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮軍の兵士(デイリーNK)

 文在寅前政権が2019年に亡命を求めた脱北漁民2人を北朝鮮に強制送還した事件を巡り、韓国統一省は12日に送還時の様子を収めた写真10枚を、18日には4分ほどのビデオ映像を相次いで公開した(下)。

 同省報道官は11日のブリーフィングで、「(2人は)憲法上は大韓民国の国民であり、北朝鮮に引き渡した場合に受けるであろう様々な被害を考えるならば、明らかに間違った部分があった」との立場を表明している。

 北朝鮮の内部情報筋が韓国デイリーNKに伝えたところによると、北朝鮮当局は男性2人の身柄を黄海北道(ファンヘブクト)の沙里院(サリウォン)にある国家保衛省傘下の施設で拘束。情報筋によれば「保衛省は50日間にわたり、拷問を伴う取り調べを行った後、2人を処刑した」という。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

 つまり同省が公開した写真と映像は事実上、この2人が、北朝鮮の「拷問室」と「処刑場」に引き立てられていく、まさにその姿を収めたものと言えるわけだ。写真と映像を見ると、漁民の1人は明らかに怯え、渾身の力で送還に抗っている。一方、もう1人はすべて諦めたかのように、淡々とした様子だった。

 この問題が韓国国内で重大視されるに従い、その情報は北朝鮮にも流入し、現地の人々の驚愕と憤激を誘っている。

 2人の出港地ともされる咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によれば、外部情報に接することのできない現地の人々は2019年当時、「南朝鮮(韓国)に逃走を試みた2人が警備艇に連れ戻されて命を落とした」という程度の噂話を耳にした程度だった。

 ところが最近になって強制送還の事実を知り、「中国で捕まったというのなら理解できても、南朝鮮に入った人々が送り返されたというのは想像すらできないこと」との反応を示しているという。

 また別の情報筋は、「南へ向かう人々は、現地政府に対する期待がものすごく大きい」としながら、「そのような期待を抱いて行った人々を送り返すとは、言葉を失う」と話している。

 文在寅前政権と関係者らは当時から、漁民2人が船内で同僚の乗組員16人を殺害し、逃亡していた事実を北朝鮮側の通信を傍受するなどして把握。国内に迎えることはできないと判断し、送還を決断したと説明している。

 ただ、犯行情報が事実であるかを確認されるための調査が、十分に尽くされたかは疑わしい。この点を巡っては、国家情報院が6日、漁民に対する合同調査を強制的に早期終了させた職権乱用などの疑いで徐薫(ソ・フン)元院長を検察に告発している。

2019年11月7日の強制送還時の様子(韓国統一省提供)
2019年11月7日の強制送還時の様子(韓国統一省提供)

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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