独裁10年の「罪と罰」(5)

北朝鮮で11日、朝鮮労働党創立76周年を記念する国防発展展覧会「自衛-2021」が開かれた。このような展覧会が開かれるのは初めてだ。開幕式では金正恩総書記が記念演説を行った。舞台の脇には移動式発射台(TEL)に載せられた新型と見られる大陸間弾道ミサイルが展示されていた。これ以外にも過去5年間に開発されたミサイル、ロケット砲などの兵器が大挙、展示された。

金正恩氏が、執権10年間でいかに北朝鮮の軍事力を発展させてきたかを誇示することが「自衛-2021」の開催目的であることは疑いようがない。並べられた多種多様な飛び道具に注目が集まりがちだが、それ以上に警戒すべきは金正恩時代に飛躍的に進んだ「核開発」だ。

米国防情報局(DIA)は15日、根拠は明らかにしなかったものの、将来的に北朝鮮が核実験を再開する可能性があるとする報告書をまとめた。2018年の金正恩氏とトランプ元米大統領との初の米朝首脳会談で、朝鮮半島の非核化に向けた方向性は確認された。しかし、米朝関係の変化や状況次第によって、金正恩氏が核実験再開に舵を切る可能性は十分にあると筆者も見ている。

金正恩氏の核開発に対する執着心はミサイル以上だ。北朝鮮がこれまで行った核実験は6回だ。

2006年10月(金正日時代)

2009年5月(同)

2013年2月(金正恩時代)

2016年1月(同)

2016年9月(同)

2017年9月(同)

これを見てわかるように、金正日総書記が執権14年間(1994年〜2011)で行った核実験は2回だが、金正恩氏は2017年までの6年間で4回も行った。さらに、2016年1月と2017年9月の核実験に関しては「水爆実験に成功した」と主張した。また、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相(当時)は2017年9月21日、国連総会に出席するため訪れた米ニューヨークで、「太平洋上での水爆実験」にまで言及した。

(参考記事:北朝鮮外相「太平洋上での水爆実験」…金正恩氏声明

北朝鮮の水爆保有が事実なら、周辺国にとっての脅威は格段に増す。

さらに、米CNNテレビは今年9月16日、米ミドルベリー国際大学院モントレー校の核専門家ジェフリー・ルイス氏の話として、北朝鮮が寧辺のウラン濃縮施設を拡充していると報じた。14日撮影の商業衛星画像を分析したルイス氏は、共同通信の取材に対し、水爆増産のため高濃縮ウランの生産を拡大する狙いがあるとの見方を示している。

一方、一部の自称軍事通の間には「北朝鮮のような貧困国家に水爆は製造できない」との見方もある。こうした見方に対して警鐘を鳴らすのが高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所の多田将准教授だ。

北朝鮮の核開発やミサイル開発に対して、純粋に科学者の目線で分析、検証を行っている多田氏は、「これまでの北朝鮮の核開発史やデータを見る限り核武装国家であると言っていい」と述べた。また、「最初の2回の核実験の間が3年間(2016年〜2019年)空いているが、科学の実験では初期段階は時間がかかるものだ。しかし実験が進めば進むほど、データや修正点が明確になっていき、短期間で実験を行って完成に近づけることができる」と解説した。

多田氏は水爆実験に関して、「成功している可能性は十分にある。2017年9月の第5次核実験の当日に公表した写真をみてほしい。このピーナッツ型の爆弾は、もちろんモックアップ(模型)だ。しかし、ここに備えられているデバイスを見る限り、北朝鮮は水素爆弾に必要なすべてのものを理解している」と指摘。そのうえで、北朝鮮の核実験は「驚くほど順調に進んでいる」と述べた。

「北朝鮮が貧困国家だからといって核開発ができないというのは大きな間違いだ。中国は、今の北朝鮮並に貧困だった1969年に核実験に成功して核保有国家となった。インドもパキスタンも同じだ。国家事業として取り組めば現場の科学者たちのモチベーションもあがるだろう」(多田氏)

北の核兵器開発について弾頭の小型化や大気圏再突入などクリアすべき問題はあるが、それは米国に到達可能かどうかのレベルの話だ。日本にとって北朝鮮はすでに危険な核保有国家である。日本は、「水爆を持った危険な金正恩氏」とどう向き合っていくのか本気で議論すべきだ。(つづく)