非核化しても金正恩氏には「使える最終兵器」が残っている

金正恩氏(写真:ロイター/アフロ)

韓国メディアの報道によれば、北朝鮮と韓国は14日に板門店(パンムンジョム)で行われた将官級軍事会談で、北朝鮮が軍事境界線付近に配備した長距離砲を後退させる問題について協議を始めた。

韓国側がこの問題を提起したところ、北朝鮮は拒否感を示さなかったという。仮に北朝鮮がこれに応じるとしたら、非核化と並ぶ「大胆な決断」であると言える。

すでに広く知られているとおり、朝鮮人民軍の規律は地に落ちている。部隊内では物資の横領や横流し、脱走、窃盗、性的虐待が横行。まともに戦争など出来そうもない状態だ。

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吹き飛ぶ韓国軍兵士

そんな中、長距離砲部隊は核ミサイルを扱う戦略軍や、特殊部隊、サイバー攻撃部隊と並び、数少ない虎の子だ。

北朝鮮は、軍事境界線のすぐ北側に、170ミリ自走式榴弾砲と240ミリ放射砲(ロケット砲)を大量に配備している。これらは韓国の首都圏を射程に収めており、有事の際にはごく短時間に、数千発の砲弾をソウルに降らせることができる。また、新型の300ミリロケット砲の射程はさらに長く、京畿道地方平沢地区の在韓米海軍キャンプ・ハンフリーズおよび韓国の陸海空軍司令部の脅威となっている。

北朝鮮と韓国が対峙する軍事境界線では、小規模な衝突が無数に起きてきた。それがエスカレートして戦争に発展してしまうのが、最も現実的な脅威なのだ。たとえば2015年8月には韓国軍兵士が北朝鮮側の地雷に接触し、身体の一部を吹き飛ばされる事件が発生。これがきっかけとなり、南北は開戦寸前まで行ったのだ。

(参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士…北朝鮮の地雷が爆発する瞬間

そのようにして衝突が拡大しても、北朝鮮も簡単には核を使えない。核の先制使用が米韓の大量報復を呼ぶのは確実で、そうなったら体制そのものが崩壊してしまうからだ。

米韓側も当然、そのような「読み」を持っている。だから核武装した北朝鮮に対しても、安易に譲歩しようとしない。そのため北朝鮮側は、核のような「使えない最終兵器」ではなく、「いざとなったら使える切り札」が必要だ。それが長距離砲部隊なのだ。

また今後、米韓との約束に従って非核化を進めるにしても、長距離砲部隊を軍事境界線に張り付けて置けば、とりあえずは抑止力を保てる。その両方で譲歩するとなると、北朝鮮としては相当に大きな「見返り」が必要だ。それがいったい何なのかが気になるところだ。

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