子供の差し入れも着服する金正恩氏「ポンコツ軍隊」の呆れた実態
少し前の話になるが、7月27日は北朝鮮の「祖国解放戦争勝利記念日」(戦勝節)だった。1953年に朝鮮戦争の休戦協定が締結された日を、朝鮮戦争で米国主導の国連軍に「勝った日」として祝っているのだ。
今年のこの記念日にあたり、両江道(リャンガンド)三水(サムス)郡に駐屯する朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の42旅団は、兵士たちにごちそうを振る舞う予定だった。ところが、それが忽然と消えてしまったという。
朝鮮人民軍の秩序が乱れきっているということは、今や周知の事実だ。
(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為)
それにしてもこの出来事は、こちらが呆れるほどの無節操さを垣間見せている。
現地のデイリーNK内部情報筋によると、当局は7月初め、「今年の戦勝節は朝鮮労働党が責任を持って盛大に祝う」との方針のもとに、全国に軍に後方物資を支援せよとの指示を下した。これを受け、各地の工場、企業所の労働者などが物資を準備した。
三水郡の学校に通う子供たちも、食べると精力が付くとされる植物ヒメニラ2キロを軍に差し入れ、慰問の手紙も書いて送った。ヒメニラを集められなかった生徒は現金1万2000北朝鮮ウォン(約156円)を贈った。
さらに、近隣住民はこの日のために各家庭が3万北朝鮮ウォン(約390円)を出し合って、鶏肉とウサギ肉で1世帯あたり3皿の料理を作り軍に届けた。
この地域は中朝国境に面してはいるが、山間部でもあり、密貿易などによる物資が豊富にあるとはいえない。また、兵士たちは食糧を国からの配給に頼っているが、途中で横流しされたり転売されたりして、まともに届かない。
(参考記事:米軍でも韓国軍でもない、北朝鮮軍を敗北させる「本当の敵」の正体)
そういう事情を知っている近隣住民は、兵士たちを気の毒に思って、生活が苦しい中で心ばかりの贈り物をしたのだ。
ところが、そんな贈り物が消えてしまった。当然のことだが、住民らは怒り心頭だという。情報筋は言及していないが、おそらく旅団の幹部が食べてしまったか、市場に横流ししたものと思われる。
同時期に行われた政治講演会では、「元帥様(金正恩党委員長)が最も大事に思い愛しているのは兵士たちだ」などと言っていたが、鼻で笑う人も少なくなかったという。
(参考記事:「金正恩はどうせ口だけ」 米国との“対決騒ぎ”にシラケる北朝鮮国民)
本当にそう思っているのなら、末端の兵士たちはもっとまともな暮らしをしているはずだからだ。
これが、北東アジアの安保を揺るがしている北朝鮮軍の実態なのである。