15歳少女も無慈悲に処刑…救いは金正恩氏の「愛」だけなのか
北朝鮮人権白書を読む(3)
国際自由権規約(自由権規約)第6条5項は、18歳未満に対する死刑宣告を禁止しており、妊婦に対する死刑執行も禁じている。このうち18歳未満については、犯罪が行われた時点での年齢としている。
妊娠中絶させ執行
北朝鮮は1999年の刑法改正時に、「犯罪を行った時点で18歳に達していない者には死刑を宣告することができず、妊娠している女性に対しては死刑を執行できない」との規定を設けた。立法措置としては、自由権規約の求める水準を達成していることになる。
しかし、韓国の政府系シンクタンク・統一研究院が発表した「北朝鮮人権白書2017」によれば、北朝鮮は過去、こうした規定を自ら破っていた可能性が高い。
同院の調査に対し証言したある脱北者は、2007年8月、国家保衛省の拘留施設から引き出された15歳前後に見える男女5人が、経済事犯と社会的な逸脱行為(非行)を理由に処刑されるのを目撃したと述べている。
いったい、この少年少女が何をしたのかはわからないが、北朝鮮にも日本や韓国と同様に不良少年はいる。
(参考記事:北朝鮮で少年少女の「薬物中毒」「性びん乱」の大スキャンダル)
そして、そんな子どもたちが成人して立派な人物になるケースだって多いだろう。仮に、手の付けられない暴走があったとしても、それは独裁体制下の閉塞感と無縁でないはずだ。
(参考記事:一家全員、女子中学校までが…北朝鮮の薬物汚染「町内会の前にキメる主婦」)
そんなことも考えずに死刑でケリをつけてしまうとは、その短絡さに驚く。
また、別の脱北者は16歳の少年が2人を殺害した事件で、当局はこの少年が成人になるまでの1年6カ月間を待ち、公民証を発給して銃殺したのを見たと証言している。
自由権規約の規定は、18歳未満の行いに対して死刑を与えてはならないという意味のものだ。北朝鮮のこの行いが事実なら、明らかに同規約に対する違反である。
一方、別の脱北者は2009年9月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)茂山(ムサン)において、人身売買の罪で公開裁判を受けた男女4人が処刑されたとし、そのうちの女性1人は妊娠していたが、病院で強制堕胎させられた後に死刑が執行されたと証言した。
自由権規約は誕生前の、母親とは別個の生命を守るために、妊娠した女性を処刑してはならないと定めているのだ。強制堕胎で赤ん坊を殺してしまうのなら、北朝鮮の刑法改正は何のために行われたのか。
(参考記事:刑務所の幹部に強姦され、中絶手術を受けさせられた北朝鮮女性の証言)
もっとも、同院が2016年に行った調査においては、未成年者や妊婦が処刑されたという新たな情報は得られなかったという。
金正恩党委員長は若者や子どもたちに対する「愛情」をアピールしているが、それが偽りでないのなら、今後は二度と、未成年者や妊婦の死刑を許すべきではないだろう。