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金正恩氏が「極悪性スキャンダル幹部」を水害被災地に派遣

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏

北朝鮮北東部が台風10号(ライオンロック)による甚大な被害を受けたにもかかわらず、最高指導者の金正恩党委員長は未だ現地視察を行っていない。

「変態性欲者」の評判

金正恩氏が被災地を訪れていない理由としては、警備など様々な問題が考えられる。最高指導者が動くとなると「トイレ問題」ですら一般人と異なる環境が必要になるだけに、本人が拒んでいる可能性も排除できない。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

被災住民からは「見捨てられた」という憤りの声が出るなか、金正恩氏が被災地へ派遣したのは、極めて評判の悪い最高幹部だった。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、被災地を訪れたのは崔龍海(チェ・リョンヘ)氏。過去、女性問題などで数々の変態性欲スキャンダルを起こしており、失脚と復活を繰り返してきた人物だ。

(参考記事:美貌の女性の歯を抜いて…崔龍海の極悪性スキャンダル

500人死亡の地獄絵図

崔龍海氏は今月初めに被災地を視察したが、住民には会わず幹部に対していくつかの指摘をしただけで、そそくさと帰ってしまった。しかも、その指摘が「他の地域の復旧に比べると、会寧(フェリョン)市は最も遅れている」だの「今月27日までに被災者に提供する住宅を無条件で完成させよ」だの、一方的に叱責するだけのものだった。正恩氏は、誰もが知っている崔龍海氏を派遣しておけば、現地の不満は抑えられるだろうと踏んだのかもしれない。

しかし案の定と言うべきか、被災者の間からは「最高幹部のくせに問題の解決もできず、ガキでもできるような指摘をしただけだ」と、不満の声があがっている。さらに、視察自体がさらなる悪循環を引き起こしかねないと危惧されている。

崔龍海氏クラスの最高幹部に叱責された地元の高級幹部は、下級幹部を叱責する。下級幹部は住民を動員して無理な工期を設定。そして事故が多発するという北朝鮮独特の悪弊がこれまで繰り返されてきた。

過去には、橋梁の建設現場で500人が一度に死亡する地獄絵図のような大惨事が起きたにも関わらず、その教訓がまったく行かされていないのだ。

(参考記事:北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

仮に住宅が完成したとしても、見栄えは整えられているが、突貫工事が原因で欠陥だらけの住宅ばかりになる。これが建国以来、繰り返されてきた北朝鮮官僚主義の悪弊なのだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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