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北朝鮮「男女入り乱れ」収容所送りの重罪

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏

核・ミサイル問題や、北朝鮮の相次ぐ軍事挑発で朝鮮半島情勢が緊張する中、現地からちょっと間の抜けた話が伝わってきた。

3月中旬、北朝鮮北部・咸鏡北道のある郡で、ポルノビデオを真似して乱交パーティーに及んでいた若い男性と仲間たちが当局に逮捕されたというのだ。

(参考記事:「ポルノ見て乱交」で収容所送りも…恐ろしい北朝鮮の風紀取締り

北朝鮮では、韓流ドラマやハリウッド映画など、外国の映像作品は「違法録画物」としてご禁制になっており、もちろんポルノもここに含まれる。そして、これら違法録画物を取り締まるため、「109常務(サンム)」と呼ばれる専門の捜査機関まであるのだ。

厳しい思想統制で知られる北朝鮮だが、実は、この手の話はさほど珍しいものではない。昨年にも、違法薬物を吸引しながら乱交パーティーを行っていた人々が摘発される出来事があった。

ポルノは、それこそ広く蔓延しており、かつて新潟と元山(ウォンサン)をつないでいた貨客船「万景峰(マンギョンボン)」号の船内放送で誤って流れてしまったとか、国内の芸術関係者がこっそりオリジナルを作っていた、などの噂が流れたこともあった。全体主義体制であろうが資本主義社会であろうが、やはり人間は同じような趣向を持つものなのだ。

ただ、絶対的に違っているのは、そのように禁を犯した人々に対する処罰の厳しさだ。

日本や韓国でなら、ポルノ鑑賞や乱交パーティーを行っていることが他人に知れたらかなり恥ずかしいだろうが、あくまで個人の自由だ(売買春や違法薬物は論外だが)。それが北朝鮮では、ひどければ政治犯収容所に送られたり、最悪なら処刑されてしまったりする。ちなみに、特権階級はやりたい放題であるにも関わらずだ。

(参考記事:美貌の女性の歯を抜いて…崔龍海の極悪性スキャンダル

ポルノに限らず、韓流ドラマなどのソフトを流通させた場合も同様に厳しすぎる罰を受ける。これこそは、金正恩体制による許されざる人権侵害のひとつである。そのことは、「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書でも指摘されている。

そして、金正恩氏はそうした人権問題追及の厳しさに国際社会に仲間入りする道を見失い、ヤケクソ半分で核・ミサイルの暴走を続けているのだ。ポルノに対する行き過ぎた厳罰と朝鮮半島情勢の危機は、無関係な問題ではないのである。

(参考記事:北朝鮮「核の暴走」の裏に拷問・強姦・公開処刑

(参考記事:金正恩氏が「暴走」をやめられない本当の理由

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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