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小浜大統領?「ザ・インタビュー」海賊版(日本語字幕入り?)が中国で出回る

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
ザ・インタビューの海賊版。韓国語は「この無学な米国の奴らを信じないでください」

米朝対立の新たな火種になっている金正恩氏の暗殺を描いたコメディ映画「ザ・インタビュー」海賊版がミャンマーで出回っている。ところが北朝鮮大使館の圧力によって警察が取締に乗り出しているとミャンマーの反政府系ニュースサイト「イラワディ(拠点はタイのチェンマイ)」と「自由アジア放送(RFA)」が報じた。

北朝鮮当局は映画が国内に出回ることを防ごうとしている。とりわけ国境を接する中国から流入することに神経をとがらせているが、すでに中国国内では海賊版が販売されていた。筆者が編集長をつとめるデイリーNKジャパンは、現地で海賊版DVDを視聴した男性から話を聞くことができた。

中国のDVDショップで海賊版をゲット!

「偶然、立ち寄ったDVDショップで見つけたんだよ。あっ!『ザ・インタビュー』だって」

そう語るのは北朝鮮マニアの日本人男性(30代)。色んな場所に足繁く通い、北朝鮮に関するグッズがあれば、金に糸目をつけず買い漁る。どこで見つけたのか自宅には金日成氏と正日氏のホンモノの肖像画が飾ってある。

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「どこで入手するのかって?それは企業秘密だから言えないよ。でも、日本でも探せば色んな場所に北朝鮮グッズのお宝は眠っている。集めたからって何か価値があるとは思わないけど、まぁネタとしてはいいかな(笑)」

訪朝歴も7度あり、平壌の金日成広場で朝鮮人民軍兵士のように1人で行進したこともある。そんな彼は年始年末の休暇で中国の深セン市を訪れた。

「老街という街をブラブラ歩いているとDVDショップがあったので覗いてみた。そこでは、日本のSNS歌謡祭や紅白歌合戦のDVDなどもあったね。日本のDVDが6割で中国、韓国が2割ずつという感じ」

そこで、あるものが彼の目をとらえた。

「ザ・インタビューのパッケージ品で店頭に陳列してあったんだ。驚いたけど、まぁ中国だからさもありなん。ただ、びっくりしたのはタイトルが日本語だったことだね。まさか字幕まで日本語とは思っていなかったけど・・・」

字幕が日本語だが??

海賊版を日本に持ち帰ることが違法であることは男性も熟知している。土産話にと1度視聴したら破棄するつもりでDVDを購入した男性はさっそくホテルに帰るとPCで再生した。すると・・・

「字幕も日本語なんだ。一体誰が翻訳したのだろうかと思いながら見ているとアレ?って。オバマ大統領が「小浜」になっていた(笑)」

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キャプチャー画面を確認したところ確かに「小浜(オバマ)大統領」になっている。それ以外の字幕もかなり不自然な日本語訳だ。

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朝鮮民主主義人民共和国が「北朝鮮民主主義人民共和国」になっている。こんなヘンテコな字幕も。

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「歓び組み」とは「喜び組」のことと思われる。

「機械翻訳でやったのかもしれない。しかし、こんな早くに中国で出回るとは思っていなかった。果たして中国の人にとっては興味があるかどうかはわかないけど。売れていたかって?いやぁ、わざわざお金まで出してあんな海賊版DVDを買うのはオレぐらいじゃないかな」

男性は、DVDを視聴してキャプチャー画面を写真に収めたあと無慈悲に破棄したという。

ザ・インタビューが北朝鮮国内に出回るのは時間の問題かもしれない。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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