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プロを見据えて奮戦中の木下晴結「いい意味で、テニスとの距離感を良くして、覚悟を決めるタイミングで」

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
2023年シーズンを終えた木下晴結(写真すべて/神 仁司)

木下晴結(きのしたはゆ、WTAランキング825位、大会時、以下同)は、17歳でジュニア選手だが、2023年シーズンには、ITF(国際テニス連盟)主催のジュニア大会だけでなく、ITFの一般大会にも出場して、世界ランキングに必要なWTAポイント獲得を目指して奮戦した。

そんな中、11月下旬に、神奈川県日吉で開催されたITFサーキットの一つ、W40横浜慶應大会の予選に出場し、予選1回戦では、相手が第2セット途中で棄権して、木下は久しぶりの勝利を手にした。予選2回戦では、WTAツアーのダブルスでは世界のトップレベルで活躍する柴原瑛菜(552位)と対戦して好試合を演じた。

――柴原さんと戦って、木下さんは、7-6(6)、1-6、4-6で惜敗しました。木下さんにも勝つチャンスはあった試合だったと思いますが、振り返ってみてどうですか。

木下:ん~~、めっちゃ悔しいです。チャンスがあったし、ここという大切なポイントが取りきれなかったので、課題がまたいっぱい出たなという感じです。(柴原さんの)球の質はもちろん高いので、いかにそれを崩すかが大事だった。打ち合えるなとは思いました。しつこくできた時は、私の形にできたことがあった。風もあったので、がまんが勝負を分けたかな。

――木下さんのサービスのモーションが変わりました。トスアップより前に、ラケットを肩より高い位置にセットするようになりましたが、なぜ変更したのですか。

木下:右ひじの高さを落とさないようにするのが一番の理由です。あとは、下からラケットを引くと、サーブを打つまでが長いので、リズムが崩れやすいんです。トレーナーと話し合った結果で、10月初めに変えました。変えた直後は、「いいやん」と思ったんです。ラケットを早い段階で高くセットするので、(サーブの)打点まで近いのがいいけど、最近また若干よくわからなくなったりして、まだ染みついていない。

――ワールドスーパージュニア(J500、ジュニア国際大会では上から2番目の大会グレード)でのダブルス優勝おめでとうございます。ダブルスパートナーは、園部八奏(そのべわかな)さんでした。木下さんは、昨年準優勝だったので、木下さんの地元大阪での嬉しいビッグタイトルになったのではないでしょうか。

木下:シングルスで勝ちたかったんですけど、1回戦で負けちゃって、めちゃめちゃ泣きました。この世の終わりぐらいに落ち込んでたんですけど、その1時間10分後にダブルス1回戦があって、とりあえず切り替えるしかないと思って、泣くだけ泣いて挑みました。パートナーには、後から「そうだったんだ」と言われて、意外と気づかれていなかったみたいです。

――木下さんのご家族は優勝を喜んだのでは。

木下: そうですね。お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、地元なので来てくれて、ダブルスで勝ちきれて優勝できてよかったです。

――2023年シーズンでは、一般の大会にも挑戦していましたけど、ジュニア大会も含めて、シングルスで勝ち星に恵まれず、モヤモヤしていた部分があったのではないでしょうか。

木下: 4月ぐらいに左ひざを痛めて、そこから痛めながら試合に出るという大会が多過ぎて、自分のプレーが出来きらない感覚だったのが続きました。試合に出ても力を出しきれずに負ける、みたいな感じだった。コーチには、「良くなっている」と言われるけど、自分の中では、「けが前とちょっと違うやん」と。

――5月から7月までのヨーロッパシーズンは大変だったのでは。

木下: そうですね。ウィンブルドンの後にコロナにかかりました。体調と体がなかなかかみ合わない時期があって、(夏の)USシーズンに入っていって、ちょっとずつ自分のテニスができるようになっていったけど、試合勘がなかなか戻らずという時期が続きました。

――何が前の自分と違うと感じて、今と比べてしまうのでしょうか。

木下: どれと言われるとそんなにないんですけど、大事な時に、取りきれるかどうか、というのはちょっとあるかな。ま、やっていくしかない。やっていったら、チャンスが……。経験というか、学びと思って。

W40横浜慶應大会では、惜敗したものの、柴原瑛菜を相手に、木下らしいオールラウンドプレーを見せた
W40横浜慶應大会では、惜敗したものの、柴原瑛菜を相手に、木下らしいオールラウンドプレーを見せた

――木下さんが、今後に向けて、目標としていることは何ですか。(ITFジュニアランキング41位、WTAランキング815位、いずれも12月11日付)

木下:まずは、来シーズンに向けて体を鍛えて準備をしたい。オーストラリアンオープンは、ジュニアの部に出ます。たぶんジュニアとしては最後になると思います。だから、やるべきことをしっかり続けて、もちろん上位を目指すというのはあるんですけど、今の結果に一喜一憂し過ぎずにやりたい。来シーズンは、WTAランキングのキャリアハイを更新したいし、W25大会やW40大会の本戦から出られるよう400位台にしていきたい。

――もちろん木下さんのペースというか、気持ち次第ですが、2024年にはプロ転向があるのかなと思うんですけど、いかがですか。

木下: そうですね。自分の覚悟を決める時が、たぶん近づいているので、それに向けて。来年は、(18歳で)成人しちゃうし、いち人間として責任をもって。プロになることは、社会人になることと同じように、自分の責任は自分で、という感じだと思うので、いい意味で、テニスとの距離感を良くして、覚悟を決めるタイミングでしっかり頑張っていきたいです。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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