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世界2位の大坂なおみ、東京オリンピックでは3回戦で姿を消す。8月末のUSオープンに向けてピーキングへ

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
初めてのオリンピックを3回戦で終えた大坂なおみ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 大坂なおみは、オリンピックデビューとなった東京2020オリンピックを3回戦という結果で終えた――。

 女子シングルス3回戦で、第2シードの大坂(WTAランキング2位、7月26日付け、以下同)は、マルケタ・ボンドロウソバ(42位、チェコ)に1-6、4-6で敗れ、オリンピックで初のベスト8入りはならなかった。

「日本での思い出はたくさんあり、私の生き方や考え方に影響しています。今回、日本代表としてオリンピックに出場できることに誇りを持っています」

 このように初めて戦うオリンピックへの決意を固めていた大坂は、1回戦と2回戦では、対戦相手に一度もサービスブレークを許さずに、オリンピックで上々の滑り出しを見せていた。2回戦勝利後に、「他の大会で優勝を目指すように、金メダルを目指したい」とメダル獲得への意欲も見せていた。

 ただ、台風8号の影響で屋根が閉じられた有明コロシアムで行われた3回戦は、大坂にとってこれまでと全く異なる展開となった。左利きのボンドロウソバとは初対戦だが、大坂は第1セット第1ゲームでいきなりサービスブレークを許した。試合の立ち上がりから主導権をなかなか握ることができず、一気に第1セットは0-4とされた。

 ボンドロウソバは、大坂のグランドストロークの強打に対して、落ち着いて回転をかけながら深いボールを返球した。さらに随所で、バックハンドのドロップショットを効果的に決め、大坂をリズムに乗せなかった。

 また、ボンドロウソバは、リターンが良く、イージーなリターンミスをほとんどしなかったため、大坂のセカンドサーブでのポイント獲得率は、わずか34%(8/23)にとどまった。

 結局、大坂は、ボンドロウソバと同じ22本のウィナーを決めるものの、ミスを32本犯してしまい、最後まで立て直すことができず、3回目のマッチポイントで、大坂のバックハンドクロスがサイドアウトになり、3回戦敗退となった。

 大坂は、テニス競技でメダル候補として注目されていた。ただ、5月下旬のローランギャロス(全仏テニス)・1回戦以来の試合だっただけに、ボンドロウソバ戦のようにリードされたり、プレッシャーをかけられたりする場面で、しばらく試合から離れていたことによって対処しきれず、悪影響が出てしまったのは否めない。ぶっつけ本番のオリンピックになってしまったことを考えれば、受け入れざるを得ない結果だろう。

聖火リレーの最終走者を務め、聖火台で点火する大坂なおみ。テニス選手では初めての栄誉だった
聖火リレーの最終走者を務め、聖火台で点火する大坂なおみ。テニス選手では初めての栄誉だった写真:長田洋平/アフロスポーツ

 今回のオリンピックでは、開会式でテニス選手としては初めて聖火リレーの最終走者を務めた大坂。聖火台に点火する大役を見事に務めた。オリンピックの理念である多様性や調和、そして、世界の新しい時代の象徴として、大坂はまさに適役だった。

 男子世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、大坂が聖火ランナーの最終走者を務めたことを、テニス界にとって大きなことだと彼女を称えた。

「テニス界にとってこれ以上素晴らしいことはない。自分を、自分の国を、そして自分のスポーツを代表している。大坂なおみは、日本の一番人気で誰もが注目している。ホームでプレーすることのプレッシャーは大きいが、テニスがこれだけ注目されることは素晴らしいことだ」

 初めてのオリンピックを終えた大坂に、プレッシャーがなかったと言ったら嘘になるだろう。コロナ禍での強行開催となり、しかも無観客で異例づくしのオリンピックであったため、精神的にも負担は大きかったのではないか。

「負けたことはもちろん悲しいが、初めてのオリンピックの経験に満足している」

 こう振り返った大坂は、幸いにも23歳でまだ若く、再びオリンピックへ挑戦する機会は訪れるだろう。

 オリンピックが終われば、プロテニスプレーヤーは、ツアーに戻って“通常業務”をしていかなければならず、立ち止まっている暇はない。

 オリンピック早期敗退は残念ではあるが、8月からの北米ハードコートシーズンへの準備が念入りにできるとして、大坂は切り替えていくべきだ。

 8月30日からニューヨークで開催される今季最後のグランドスラム・USオープンが控えている。大坂は、ディフェンディングチャンピオンとして臨み、USオープンで2連覇および3回目の優勝を目指す。

 一番相性の良いUSオープンのハードコートで、大坂は、最大限の力を発揮できるようにピーキングしていきながら、再び頂点の座に就けるのかどうか、彼女の力が問われていく。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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