英地方紙大手ジョンストン・プレスが身売り 紙の広告頼み脱却できず

「所有者は変わっても新聞は変わらない」と述べる、「i」の編集長(サイトより)

 (日本新聞協会が発行する、週刊「新聞協会報」12月11日号掲載の筆者記事に補足しました。)

 英地方新聞界の窮状が、改めて如実になった。地方紙出版大手ジョンストン・プレス社(本社スコットランド・エディンバラ)が、11月中旬、社債権者によるコンソーシウム「JPIメディア」に買収されたのである。同社は低価格の全国紙「i(アイ)」のほかに地方紙大手「スコッツマン」、「ヨークシャー・ポスト」など約200の新聞を発行する。

 1990年代から2000年初頭までの大規模な買収を繰り広げた結果、2億2000万ポンド(約317億円)の負債を抱え、当初は借り換え先を探したが見つからず、支払い期限が翌年6月に迫り売却を検討していた。しかし売却先が決まらず、11月16日に管財の管理下に置かれた。その資産が翌17日、コンソーシアムに移管された。

 ジョンストン・プレスの身売りは、紙版の広告収入に大きく依存する地方紙業界の縮図といえる。

拡大路線があだに

 ジョンストン・プレスは1767年、スコットランド地方南部フォルカークでジョンソン一家が創業した。最初の新聞「フォルカーク・ヘラルド」の発行は1846年だ。

 1970年代以降地方紙を次々と買収し、カバーする領域はアイルランド、英領北アイルランド、イングランド地方、ウェールズ地方にまで広がる。88年には、ロンドン証券取引所に上場した。

 90年代半ば以降インターネットが普及し、日本同様に英国の新聞の発行部数は減少の一途をたどった。

 英国の地方紙は収入の約80%を紙版の広告に依存しており、ジョンストン・プレスも例外ではない。2007年の案内広告収入は1億7700万ポンドだったが、不動産、自動車、求人広告がネット界に移り、昨年は2000万ポンドにまで落ち込んだ。グーグルやフェイスブックがデジタル広告の収入の大部分を得るようにもなっていた。

 昨年の業績は税引き前で9500万ポンドの損失を計上した(前年は3億100万ポンドの赤字)。印刷版の広告収入は前年比20%減の4900万ポンド。この中で案内広告は29%減った。デジタル広告の収入は8%増の2000万ポンド。販売収入は1%減の7900万ポンドだった。

 人員削減やオフィス18か所の閉鎖などにより負債削減を試みたが、1900万ポンドに上る債務返済費が重くのしかかった。

 今年上半期の収入は前年同期比で10%減少。税引き前で620万ポンドの利益を出し、前年同期の約1000万ポンドの赤字から逆転した。これは16年に買収したアイが好調だったためだが、ジョンストン・プレス社の株価は業績発表後20%下落し、身売りとともに同社の株は上場廃止となった。

 約23万900部を発行する人気のアイと比べ、衰退が目立つのが05年に買収したスコッツマンだ。スコットランド地方を代表する日刊紙だが、2000年に約10万部だった発行部数は約1万7000部まで落ちた。1億6000万ポンドを投じた買収で負債額が大幅に増え、紙媒体の広告現象もあって経営陣は大規模な経費削減に取り組んだ。インターネットへの投資も遅れ、スコッツマンは急速に影響力を失った。

「助成や投資に活路を」

 JPIメディアはどの新聞も廃刊にせず、約2000人の人員も削減しない予定だ。債務を8500万ポンドに削減するほか、返済期限を23年とする。同時に3500万ポンドを編集室に新規投資するという。

 新聞界のニュースを伝えるウェブサイト「プレス・ガゼット」のドミニク・ポンスフォード編集長が、かつてジョンストン・プレス社が発行する新聞の1つで働いていた時の経験を記している(11月22日付)。

 当時全スタッフは「清掃人と同程度の給与をもらう新人ジャーナリスト(自分)とパートタイムの編集補佐が一人だけ」。現在では同社の中で「編集補佐役を置く新聞はほとんどなく、専任の記者も置かない場合が多い」。原稿は中央の編集サーバーに送られ、そこでデスクが見るという。記事は複数の新聞に掲載される。

 同氏はジョンストン・プレスの旧経営陣が「地域のニーズより短期的な利益を上げることを優先させたのではないか」とみる。新経営陣には長期的な視点から質の高いジャーナリズムへの投資を望むと述べ、「地方紙には地元の目や耳となり、人と人を結び付ける役目がある」と指摘した。

 メディア・コラムニストのロイ・グリーンスレード氏は「地方紙は利益のためにではなく公共サービスとして経営されるべき」と題した、ガーディアン紙の記事(11月25日付)の中で、地方紙経営に新たなビジネスモデルがあるべきと主張する。

 例えば、広告収入に加えて「公的機関からの助成金、米シリコンバレーからの投資、慈善組織からの支援、英BBCとのジョイント・ベンチャー」など新たな収入源を考える時が来たと説いた。