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スペイン・カタルーニャ独立問題 ー元自治政府首相を反逆罪などで起訴するための手続き開始へ

小林恭子ジャーナリスト
29日、カタルーニャの独立に反対する人々が集まった様子(写真:ロイター/アフロ)

 スペイン・カタルーニャ州の自治が先週末に一時停止となってから、初の月曜日となった30日。罷免された州政府高官らは州警察の立会いの下執務室に入り、私物の回収後すぐに出るよう指示を受けた。

 自治停止のきっかけは10月1日に同州で行われた住民投票だ。独立支持派が多数を占めたことで、この投票自体を違法と見なす中央政府と自治政府側は数週間にわたって、政治的衝突を繰り返してきた。

 27日にプチデモン自治政府首相はカタルー二ャが共和国として独立したと宣言。これが引き金になって中央政府は自治政府の首脳陣らを解任し、同州を政府の直接の管理下に置いた。12月21日には、自治議会の選挙が行われると発表した。

半独立派のデモを報道する現地紙(筆者撮影)
半独立派のデモを報道する現地紙(筆者撮影)

 29日には独立に反対する市民ら数十万人がバルセロナ市内でデモを行い、新聞やテレビで大きく報道された。

プチデモン氏らの今後は?

 今後、プチデモン氏を筆頭とする自治政府内閣の人員はどうなるのか?

 ホセ・マニュエル・マザ検事総長は30日、プチデモン氏を含む州の指導者らを国家反逆罪、扇動罪などで起訴するための手続きを行うよう裁判所に申請した、と述べた。住民投票自体をスペインの憲法裁判所は違法としているので、投票にまつわる公金の不正使用の罪でも訴追されるべき、という。もし反逆罪で有罪となれば、最悪の場合30年の禁固刑となる。起訴対象となるのは14人前後と見られている。

 プチデモン元首相と元副首相は中央政府による解任措置を認めておらず、解任できるのはカタルーニャ州の市民のみ、としている。

 同氏が現在、スペイン国内にいるのかどうかは不明だ。30日朝、プチデモン氏は政府の建物の写真をインスタグラムにアップロードしたが、その姿を見た者はいないようだ。

 スペインの地元紙が報じたところによると、プチデモン氏はベルギーの首都ブリュッセルを訪れており、弁護士と今後を相談したり、ベルギー内で独立を求めるフランダース地方の政治家と会合を持つ予定だという。

 プチデモン氏はカタルーニャ市民に対し「民主的な抵抗」を行うよう呼びかけており、独立支持者のデモを主催した市民団体などはカタルーニャ自治政府の官僚に対し中央政府からの命令には不服従を求めているが、30日夕方現在、組織だった抵抗は報道されていない。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊は中公新書ラクレ「英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱」。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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