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英国ビジネス・点描(2)マイクロ起業がブーム 24%増加の都市も

小林恭子ジャーナリスト

2008年に拡大した世界的な金融危機。英国では、危機以前に約5%だった失業率が現在7.8%(今年4-6月)に達している。2016年半ば頃までは低成長が続くという。

こんな英国で、「仕事が見つからないなら、自分で始めよう」-そう考える人が増えている。

フリーで働く人を対象に仕事の案件を売買する英サイト「フリーランサー」 (登録者約870万人)によると、過去1年で「マイクロビジネス」(一人であるいは家族を手伝わせて経営する小規模の事業)を始める人が急増した。

都市別上位ランキングでは、トップがイングランド地方北部の都市ニューキャッスル(前年比24%増)で、これにマンチェスター(23%)、ベルファースト(21%)、ロンドン(21%)、カーディフ(21%)、エディンバラ(20%)、リバプール(20%)、バーミンガム(19%)、リーズ(19%)、グラスゴー(18%)と続く。

起業は「景気後退で解雇された時の準備や収入不足を補うのが目的」(フリーランサー社の欧州担当者)という。オンラインショッピング用のソフトを作ったり、ネットで翻訳サービスを始めるなど、「パソコン一つで起業できるようになったこと」も追い風になっている。

英政府の依頼でシンクタンク「バンクサーチ」が調べたところによると、昨年の起業数は過去最高の49万件に達し、中小企業の数は約480万となった。

起業後「どれほど利益を出しているかは疑問だ」と手放しに喜べないという人もいる。景気が本格的に回復するまでの防衛策として賢い一手ともいえるのかもしれない。

(週刊「エコノミスト」の「ワールドウオッチ」の筆者担当分に補足しました。)

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊は中公新書ラクレ「英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱」。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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