Yahoo!ニュース

興収100億円なるか、破竹の勢い「ONE PIECE FILM RED」

小新井涼アニメウォッチャー
映画ビジュアル(筆者撮影)

今月6日に公開となった映画「ONE PIECE FILM RED」。

公開から2日間で22億円を超えた興行収入は、10日間でシリーズ歴代最高記録となる70億円超えを達成、更にその2日後には早々に80億円を突破したことも報じられました。

早くも大台の興収100億円突破を予想する声もみられるなど、間違いなくこの夏一番のヒット作となっている本作。

その興行収入の数字が示すものと、盛り上がりを牽引する要素をみてみます。

■今回の興行収入が示すこれまで以上の勢い

邦画史上初の興行収入400億円超えを記録した2020年公開の劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編をはじめ、昨年の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」や「劇場版 呪術廻戦 0」と、興行収入100億円を突破する作品が続いたここ数年。

加えて、盛り上がりを数字で示すのが難しいアニメ作品において、興行収入という分かりやすい指標があるからか、近年はアニメ映画の『何十億円突破!』といった報道が頻繁になされるようになり、その数字にも殊更注目が集まるようになりました。

こうした状況が続くとどうしても麻痺してしまいがちですが、そもそも(上映規模や製作費によっても異なってくるものの)邦画において『ヒット作か/そうでないか』というひとつの基準としてよく言われるのは、興行収入10億円超えです。

そう考えると、これまでシリーズ最高興収であった「ONE PIECE FILM Z」(興収68.7億)をはじめ、それ以降の「ONE PIECE FILM GOLD」(51.8億円)や「ONE PIECE STAMPEDE」(55.5億)、それ以前の「ONE PIECE FILM STRONG WORLD」(48億)も、その年に公開された邦画全体の中で10本の指に入るほどの、充分な大ヒット作であったことがよく分かります。

では、そんな歴代の大ヒット作の勢いをも超えて、今回大台の興収100億突破までもが早くも囁かれている本作「ONE PIECE FILM RED」の盛り上がりの原動力となっているものは、一体何なのでしょうか。

■鑑賞層を広げ、複数回鑑賞を促す要素

映画で描かれる新たなドラマや迫力のアクション、魅力的なキャラクター達など、これだけの盛り上がりが生まれるほど、本作がそもそも人々を魅了する作品であるということは大前提として、それらに加え、今回の盛り上がりを大きく牽引する要素のひとつに“歌”があるのは間違いないでしょう。

映画公開前から順次配信されていた楽曲たちは、作品ファンに物語やどんなシーンで楽曲が使われるのかといった期待を抱かせるだけでなく、楽曲をきっかけに本作を知った鑑賞予定のなかった層にまで、作品に興味を持たせるきっかけにもなったと思います。

また、Ado氏をはじめ、日本を代表するアーティストが参加する楽曲が、惹きこまれる映像表現と共に作品の随所で流れ、まるで本当にライブ会場に来ているかのような鑑賞体験ができる作品でもあることは、「ONE PIECE」のアニメや漫画をみていない友達や家族であっても映画館に誘いやすく、鑑賞層を拡大する要素ともなりそうです。

作品ファンはもちろん、「ONE PIECE」は知っているけどよくは知らないという人まで楽しめる間口の広さ、加えてまるでライブに参戦する感覚で何度も体験したくなるような本作の特徴は複数回鑑賞をも促すことでしょう。

最強の作品と最強のアーティストとのシナジーでそれらの効果をもたらしている本作における“歌(ウタ)”の存在は、作品内はもちろん、作品外で生じている人々の盛り上がりをも牽引する重要な要素となっているのだと思います。

現在放送されている、テレビアニメでの映画連動エピソードも話題を呼び、週末27日からは新たな入場者プレゼントも開始されるなど、夏休みシーズン終盤に向けてもその勢いが続いていくことが予想される本作。

一体どこまでその盛り上がりは高まっていくのか、今後もまだまだ目が離せそうにありません。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

小新井涼の最近の記事