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金曜ロードショー:盛り上がりの裏側にはSNSとの丁度良い距離感も?

小新井涼アニメウォッチャー
(提供:Paylessimages/イメージマート)

テレビ離れが叫ばれる昨今、その中にあっても毎週のように安定した盛り上がりをみせ続ける「金曜ロードショー」。

この夏も、「3週連続細田守SP」や「僕のヒーローアカデミア」、「3週連続 夏はジブリ」と、夏休みシーズンにぴったりなアニメ映画が次々と登場し、放送日にはSNSでも関連ワードが続々とトレンド入りを果たしています。

アニメ映画だけでなく、話題作やリクエストに応えた、視聴者の“みたかった・みたい”作品を次々と放送することでも話題になっており、最近はそのラインナップの秀逸さにも度々注目が集まる本番組。

それに加えて、この盛り上がりの背景には、近年みられるSNSとの程よい距離感もありそうです。

■視聴者参加型の変化

思えば、懐かしいものでは“バルス祭り”の頃からネットとは相性が良かった「金ロー」ですが、その頃はどちらかというと視聴者側が自発的に発信することの方が多く、公式がその指揮を執ることは、むしろ熱が冷めると言われたこともありました。

しかし最近の「金ロー」では、「名探偵コナン」劇場版作品人気投票や、先週行われた「#もののけ姫の質問」企画、今夜発表の「あなたの好きなジブリヒロイン」や本日発表された「ルパン三世大投票」など。公式主導のネットやSNS連動企画が頻繁に行われ、それも合わせて放送が盛り上がるようにもなってきています。

これには、同じ公式主導の視聴者参加型企画でも、その性質が"動員"ではなく"募集"に切り替わっていることがポイントになっていそうです。

大きな違いにはみえないかもしれなせんが、極端に例えると、前者が“合唱コンクール”だとしたら、後者は“リクエスト給食”ぐらい参加する方の心象は違ってきます。

やらされるのではなく、好きに参加できてその声がいくらか反映もされる。手元にスマホを置きつつ鑑賞をする視聴者にとって、公式によるお膳立ては、これくらいが一番いい塩梅なのかもしれません。

■タイムラインへの集まりやすさ

加えて、本番組の金曜21時から23時という、土日の休みを控えてテレビかスマホをみてゆっくり過ごせる人が多い、タイムラインへ集まりやすい放送時間帯も、SNSによる盛り上がりの相乗効果をいくらかもたらしているように思います。

誰かの『そっか今夜の金ロー「●●」か』といった投稿から話題が広がり、感想がリアルタイムで共有されながら、放送をみている人からみていない人にまで今放送されているシーンの同時視聴感がもたらされる…。そうした様子を目にしたことが(あるいは実際に経験したことが)ある方も多いのではないでしょうか。

放送をしっかりみながらでも、“ながら見”しながらでも、みていなくても、共通の作品の話題に参加することができ、そうしてタイムラインに集まって自由にわいわいするにはちょうどいい時間帯。そこでスマホを片手に味わえる、配信プラットフォームや映画館ともまた違った緩い同時視聴感も、毎週末に本番組がSNSを含めて盛り上がるきっかけになっているように思います。

作品数だけでなく、それを楽しむ手段も無数にある現在ですが、その中にあっても話題になり続ける「金ロー」の強みは、このSNSとの程よい距離感にも、あるのかもしれません。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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